食いだおれ白書

世界を食いだおれる。世界のグルメを紹介します。孤高のグルメです。

道頓堀

「花丸軒 難波・法善寺店」〜精肉直営の目利きが生んだ浪速とんこつ、24時間、道頓堀の疲れを癒す一杯

大阪・ミナミの法善寺横丁のすぐ近くに暖簾を掲げる「花丸軒 難波・法善寺店」は、精肉業をルーツに持つ株式会社アラカワフードサービスが展開するラーメン店。創業は1978年、養豚場を営んでいた家業から派生して食肉卸売業を立ち上げ、その後「ラーメン豚吉…

暮秋の道頓堀〜光と匂いの街を歩くクロニクル

10月28日。暦の上では暮秋。いつ秋が来たのかもわからぬまま、夏の熱が去りきらず、朝晩の風だけが急に冷たくなった。初秋も仲秋も飛び越えて、気づけば季節は晩秋になっていた。 午後3時。傾き始めた陽の光が、道頓堀川をゆっくりと撫でていく。水面には、…

あづま食堂〜塩の一滴に宿る、雨の湯気、昭和の出汁

通天閣の膝元。雨の朝、路地の石畳がしっとりと濡れている。その一角に、白い暖簾を掲げた小さな店がある。 「あづま食堂」 昭和28年創業。七十年の時を超えて、いまも湯気の立つ台所を守っている。 入口の横には、年季の入った木札のメニュー。「玉子丼」「…

喫茶アドリア〜琥珀色の朝、光の濃縮と、日本橋の静けさ

日本橋の裏通りを歩いていると、瓦屋根が少し垂れた古い家並みに目が止まる。赤茶のレンガ、木の扉、そして小さく掲げられた緑の看板。 「喫茶 アドリア」。 創業は昭和53年(1978)。店名は、イタリアのアドリア海に由来するという。名付けたのはご主人のお…

Coffee Box「BAROQUE vol.2」〜エルヴィスが見守る珈琲の箱

谷町九丁目の交差点は、朝と夜でまったく顔を変える。通勤のざわめきが過ぎ、日が傾くころになると、街の音はゆっくりと深呼吸をはじめる。 その谷町筋沿いに、黒い看板が静かに浮かび上がる。「COFFEE BOX BAROQUE VOL.2」—白い文字が、少しだけ風に揺れて…

たこ焼きの元祖『会津屋』〜ソースなしで勝負する、大阪粉もん文化の源流

大阪・西成区玉出に創業した「会津屋」は、高校生の頃から大阪府立体育会館でプロレスを観に来るたびに訪れた聖地。 昭和8年(1933年)に遠藤留吉が屋台を出したのが始まりである。翌年には大阪・西成の今池に移転し、昭和10年(1935年)に「たこ焼き」を誕…

千日前『松屋うどん』〜安い、旨い、温かい、200円で満たされる幸せ

千日前を歩いていると、ふと道具屋筋に足が向く。食器や調理道具の専門店が並ぶこの通りは、観光客にも料理人にも人気のスポットだ。その一角に、古びた佇まいながらも多くの人を引き寄せる一軒の店がある。「松屋うどん」だ。 外には食券機が設置され、暖簾…

「谷九ふる里」〜夜に咲く朝顔、うどん出汁の香りに、寿司がとける

天王寺七坂のひとつ・源聖寺坂(げんしょうじざか)を登りきると、谷町筋に風が抜ける。その角に、小さな灯がある。 「谷九 ふる里」 古びた黄色い提灯が、朝も夜も変わらずそこにぶら下がっている。文字は薄れ、看板の端は少し黒ずんでいるのに、なぜだろう…

喫茶ブラザー: 通天閣の影に灯る、やさしき朝の光

通天閣のアーチをくぐると、古びたアスファルトの上に「喫茶ブラザー」の文字が見えてくる。 ガラス越しに並ぶ食品サンプルは、どれも少し色褪せているのに、妙に食欲をそそる。ショーケースの横には季節の花が咲き、入口のマットには“Welcome”の文字。この…

喫茶ドレミ〜通天閣の影に生きる、昭和の午後

通天閣の足元に、ひっそりと緑の縞模様をかかげた店がある。「ドレミ」と書かれた文字が、音符のように壁の上で揺れている。1967年の創業。かつてここは「ニューワールド写真館」だったという。亡くなった前店主がシャッターを切っていたその場所に、今はコ…

千成屋珈琲〜時間を凍らせるミックスジュース

大阪・新世界。串かつの香りとソースの熱気が満ちる通りを抜けると、時の流れがふっと緩む一角がある。ジャンジャン横丁は大正時代から続く商店街。呼び込みの三味線の音がジャンジャン響いたことから名付けられた。せま〜い商店街に古き店が並ぶ。そこに、…

串かつだるま 新世界総本店〜串の一本に昭和の情熱を込めて

通天閣本通商店会を歩いていると、マドンナの『Like a Virgin』が流れてきた。場末のスピーカーから漏れる旋律が、この街の匂いと不思議に調和する。新世界は祭りのような場所だ。初夏は愛染娘が主役を張り、串かつは恋の導火線。70を超える串かつ屋がひしめ…

「珈琲専科 フーケ」〜 通天閣の影にひっそりと灯る朝の時間

朝が遅い街、新世界。その中で、まだ眠気の残る路地に、いちばん早く灯りをともす店がある。午前六時。珈琲専科フーケ。 看板の「珈琲専科」という響きが、どこか古い文学の匂いを運んでくる。 外観は煉瓦造り。扉の脇には植木鉢が並び、女将さんが水をやる…

新世界「ぎふや本家」〜串かつの衣に宿る時代の記憶

新世界という町に降り立つと、時間の感覚が曖昧になる。昭和の残り香と観光地の喧騒が、ねじれるように入り混じっているからだ。通天閣を仰ぎ見て一息つくと、路地の一角に「ぎふや本家」の暖簾が現れる。 大正5年、1916年の創業。初代通天閣が建てられたわ…

新世界「とんかつ割烹 車屋」〜通天閣の灯火、出汁香る人情割烹

通天閣本通り商店街を歩いていると、きらびやかな看板や観光客のざわめきに目を奪われがちだ。 ふと視線を落とすと、小さなフクロウの置物がこちらを見つめている。その横にかかる木の看板に、静かに「とんかつ割烹 車屋」と刻まれている。2005年に開業した…

新世界最古のお好み焼き屋「うさぎや」〜通天閣の下で味わう混沌と浪漫

通天閣の灯りが宵闇に浮かび上がる頃、その足元の路地に「うさぎや」はある。昭和26年に暖簾を掲げてから60余年、今なお鉄板の音を響かせる、新世界で最も古いお好み焼き屋だ。 店の外には提灯が灯り、木目の看板に染み込んだ年月が、町の記憶そのもののよう…

『麓鳴館』」〜心斎橋に残る昭和の宝箱、音楽と人情が回る

心斎橋の喧騒から少し外れ、大宝寺通りを北に入った横丁に、1974年創業の喫茶館「麓鳴館(ろくめいかん)」はひっそりと佇んでいる。レンガ造りの外観は時代の流れをまとい、古びたというよりは歴史を刻んだ重厚さを放つ。 扉を開けると、アンティークな内装…

珈琲館 茶珈〜大阪・高津宮の隠れ家、瓦屋町の純喫茶オアシス

大阪・中央区瓦屋町、高津宮のすぐそばにある「珈琲館 茶珈(チャコ)」は、1980年の創業という老舗の喫茶館。高津宮まで足を伸ばすと一気に飲食店が少なくなるが、その静けさの中にこの店は佇んでいる。 「喫茶店」ではなく「喫茶館」と名乗るところが、な…

大阪王将と道頓堀の夜〜餃子と川が奏でる物語、炒飯とノクターン

1969年、大阪・京橋に誕生した「大阪王将」。その2年前、京都で生まれた「餃子の王将」とルーツを同じくするが、現在はまったくの別会社として歩んでいる。 京都発祥の「餃子の王将」が“安さ・ボリューム・スピード”で勝負してきたのに対し、大阪王将は“家庭…

道頓堀〜初秋、風の色を変え、風が満ちる街

御堂筋の並木が、初秋の風に少しだけ肩を落とす。神戸でのゴッホの帰り、街路樹の緑さえどこか油彩の厚みを帯びて見える。土曜の午前、車は粛々と流れ、人の歩調はそれよりわずかに遅い。信号が青になるたび、大阪の中心に吸い込まれていく。 角を折れて道頓…

金久右衛門 道頓堀店〜金醤油・紅醤油・大阪ブラック、道頓堀を彩る三つの物

金久右衛門(きんぐえもん)という名は、道頓堀によく似合う。創業は1999年7月、比較的新しい存在だが、大阪のラーメン文化を語る上で欠かせない存在に成長した。 道頓堀店は2011年末にオープン。ラーメン激戦区の中心にありながら、深夜も営業し続け、金曜…

法善寺横丁・夫婦善哉〜甘味の聖域、織田作之助も愛した甘味処

なんば・法善寺横丁の顔ともいえる老舗甘味処が「夫婦善哉」だ。創業は1883(明治16)年。文楽の太夫・竹本琴太夫こと木文字重兵衛が「お福」の屋号で始めた店が原点で、現在は法善寺・水掛不動尊のとなりに暖簾を掲げる。 織田作之助の小説『夫婦善哉』の舞…

喫茶オランダ〜昭和29年創業、難波の路地裏に灯り続ける、珈琲と夫婦の物語

大阪・日本橋。アニメやフィギュア、カードショップ、メイド喫茶で賑わうオタロードの北端に、昭和の時間を刻み続ける純喫茶がある。その名は「喫茶オランダ」 創業は昭和29年(1954年)。なぜ「オランダ」かといえば、江戸時代にオランダを通して西洋文化が…

ホルモンらーめん 8910 千日前店 (白寿)〜大阪ミナミ発、“夢と脂肪”に溺れる至福の一杯

ホルモンらーめん8910(白寿)は、大阪を中心に展開するラーメンブランドで、店名のとおり、“ホルモンらーめん”を看板商品とする。甘みのある牛骨出汁をベースに、コシの強いストレート麺と、ぷりぷりでコラーゲン豊富なホルモンを組み合わせた一杯は、濃厚…

大阪・らーめん亀王 〜青春の味はちゃあしゅう麺、大阪・千日前で刻まれた記憶

清風高校の土曜授業が終わると、上本町から自然と足は「らーめん亀王」へ向かった。𠮷野家は清風生で埋め尽くされていたため、選択肢は亀王か伊勢屋の天ぷらうどん。週末のご褒美に瓶のコカコーラと一緒に頼む「ちゃあしゅう麺」は格別で、ラーメンに具は要…

大阪・難波「カフェ英國屋」〜喫茶文化を守り続ける高級カフェの世界

なんば駅周辺を歩いていると、1968年にできた「カフェストリート」と呼ばれる通りに出会う。御堂筋と戎橋商店街を結ぶ石畳の小道で、シックでおしゃれな店が所狭しと並び、歩いているだけでどこか異国を旅している気分になる。 その7年前にできた喫茶店で、…

浪速の胃袋・黒門市場〜カレー、鮮魚、まぐろ、串焼き、大阪の食べ歩き天国

一皿で大阪を知る、ひと串で浪速を感じる。それが大阪・ミナミの中心、中央区日本橋に広がる黒門市場。 東西南北へ“キ”の字を描くように伸びる約580メートルのアーケードには、鮮魚や精肉、青果から惣菜、飲食店まで150~160軒もの店が軒を連ね、食の香りと…

大阪上本町・木村屋〜放課後の合図はピロシキの匂い、ピロマヨという青春のリトマス試験紙

大阪上本町にある「木村屋」というパン屋を知っているかと問われれば、多くの人は首をかしげるかもしれない。しかし、清風学園の出身者に尋ねれば、誰もが間髪を入れずに答える。「ピロシキ」と。 ピロシキは東欧の惣菜パンである。小麦粉を練った生地に豚肉…

千日前『お好み焼き おかる』〜マヨアートと昭和から続く鉄板の芸術

大阪・千日前の路地に暖簾を掲げる「お好み焼き おかる」は、戦後まもなくに創業し、以来ずっと“昔ながら”を貫いてきた老舗である。改装の折にも昭和の香りを残すよう工夫し、ビーバーエアコンなどのレトロな什器をあえて飾って空間の記憶を継承する。店は開…

千日前『作ノ作』がが魅せる浪花とんこつの真髄〜肉もスープも全力投球!

大阪・ミナミの千日前に店を構える「作ノ作」。創業以来10年以上の歳月を重ね、今や浪花とんこつラーメンの名を全国に知らしめる存在となった。店内はカウンター15席のみの小さな空間ながら、昼夜を問わず客足が途絶えない。24時間営業・無休という頼もしさ…