食いだおれ白書

世界を食いだおれる。世界のグルメを紹介します。孤高のグルメです。

大阪上本町・木村屋〜放課後の合図はピロシキの匂い、ピロマヨという青春のリトマス試験紙

大阪上本町の木村屋とピロマヨ

大阪上本町にある「木村屋」というパン屋を知っているかと問われれば、多くの人は首をかしげるかもしれない。しかし、清風学園の出身者に尋ねれば、誰もが間髪を入れずに答える。「ピロシキ」と。

ピロシキは東欧の惣菜パンである。小麦粉を練った生地に豚肉、玉ねぎ、人形などの具材を包み、焼くか油で揚げて仕上げる。ウクライナ、ベラルーシ、ロシアなどで広く親しまれ、名前の由来はロシア語の「パイ」を意味する「ピローク」にある。ロシアでは一口サイズの惣菜パンとして家庭や街角に溶け込み、やがて国境を越えて世界中の食卓に広がった。だが、清風学園の生徒にとってピロシキとは、単なる異国の食べ物ではなかった。青春の味であり、放課後の合図だった。

校舎の裏手を抜けると木村屋があった。土曜日、午前中で授業が終われば、生徒たちが向かう先は決まっていた。25年前に通っていた頃はプレハブのような素朴な造りだったパン屋は、今では煉瓦造りの堂々とした店構えに変わっている。値段も130円ほどだった記憶があるが、現在は150円。数字以上に、あの熱気と香りが胸に残っている。

石井慧も今田耕司も、名を知られる清風出身者はみな木村屋のピロシキを食べて育った。木村屋のおばあちゃんの優しい「いらっしゃい」が授業終了と自由の合図。清風魂は校舎の中で育まれたのではない。木村屋の店先で、熱々のピロシキを頬張りながら養われたのだ。

大阪上本町の木村屋とピロマヨ

清風出身者かどうかを見分ける秘かな合言葉がある。ピロシキにマヨネーズを加えた「ピロマヨ」を知っているかどうかだ。小さなビニールに入ったキユーピーのマヨネーズ、20円。それを買ってピロシキにかければ完成する。これを知っているかどうかが、出身者のリトマス試験紙になる。

世界一のブーランジェが焼いたピロシキも、木村屋のピロマヨを超えるものは存在しない。木村屋のガラス越しに煉瓦の赤が映ると、あの頃の自分がそこに立っている気がしてならない。ピロシキを頬張れば、油の香ばしさとマヨネーズの酸味の向こうに、午後が蘇る。

  • 住所:大阪府大阪市天王寺区石ケ辻町13-20
  • 営業時間:7:30~19:00
  • 定休日:日曜日
  • アクセス:近鉄大阪上本町駅から徒歩5分

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