大阪のカレーといえば「自由軒」を思い浮かべる人は多いが、もう一つ、確かな存在感を放つ老舗がある。黒門市場の一角、堺筋の入り口に立つ「ニューダルニー」だ。堺筋から黒門市場へ足を踏み入れると、まずオレンジの看板が目に飛び込んでくる。その先には…
三条大橋に差しかかったとき、鴨川の水面が冬の光を跳ね返し、白く滲んでいた。昼の鴨川は、どこか自分の記憶よりも明るすぎて、遠くの山影さえ輪郭を失っている。 川べりの遊歩道では、散歩をする人々が小さな影を落とし、その影が水際の曲線に沿ってゆっく…
らーめん おちゃらん屋は、ヨドバシカメラ梅田店のレストランフロアに構える、明るさと温もりを兼ね備えた一軒だ。弟とビジネスセミナーを開催する前、腹ごしらえをしようと立ち寄った。名前の由来も歴史も何もかも謎に包まれている。 ヨドバシの飲食フロア…
恩師が本を出した。そのブックイベントが北加賀屋であり、帰りに腹が減ったので駅前の喫茶「蘭」に入った。 蘭。名前からして古風で、花のよう。字がいい。素晴らしい字面だ。柔らかくて、誇り高い。外観はギリシャ神殿ふう。柱が二本、白く立っていて、気取…
大阪・ミナミの法善寺横丁のすぐ近くに暖簾を掲げる「花丸軒 難波・法善寺店」は、精肉業をルーツに持つ株式会社アラカワフードサービスが展開するラーメン店。創業は1978年、養豚場を営んでいた家業から派生して食肉卸売業を立ち上げ、その後「ラーメン豚吉…
10月28日。暦の上では暮秋。いつ秋が来たのかもわからぬまま、夏の熱が去りきらず、朝晩の風だけが急に冷たくなった。初秋も仲秋も飛び越えて、気づけば季節は晩秋になっていた。 午後3時。傾き始めた陽の光が、道頓堀川をゆっくりと撫でていく。水面には、…
通天閣の膝元。雨の朝、路地の石畳がしっとりと濡れている。その一角に、白い暖簾を掲げた小さな店がある。 「あづま食堂」 昭和28年創業。七十年の時を超えて、いまも湯気の立つ台所を守っている。 入口の横には、年季の入った木札のメニュー。「玉子丼」「…
日本橋の裏通りを歩いていると、瓦屋根が少し垂れた古い家並みに目が止まる。赤茶のレンガ、木の扉、そして小さく掲げられた緑の看板。 「喫茶 アドリア」。 創業は昭和53年(1978)。店名は、イタリアのアドリア海に由来するという。名付けたのはご主人のお…
谷町九丁目の交差点は、朝と夜でまったく顔を変える。通勤のざわめきが過ぎ、日が傾くころになると、街の音はゆっくりと深呼吸をはじめる。 その谷町筋沿いに、黒い看板が静かに浮かび上がる。「COFFEE BOX BAROQUE VOL.2」—白い文字が、少しだけ風に揺れて…
大阪・西成区玉出に創業した「会津屋」は、高校生の頃から大阪府立体育会館でプロレスを観に来るたびに訪れた聖地。 昭和8年(1933年)に遠藤留吉が屋台を出したのが始まりである。翌年には大阪・西成の今池に移転し、昭和10年(1935年)に「たこ焼き」を誕…
千日前を歩いていると、ふと道具屋筋に足が向く。食器や調理道具の専門店が並ぶこの通りは、観光客にも料理人にも人気のスポットだ。その一角に、古びた佇まいながらも多くの人を引き寄せる一軒の店がある。「松屋うどん」だ。 外には食券機が設置され、暖簾…
天王寺七坂のひとつ・源聖寺坂(げんしょうじざか)を登りきると、谷町筋に風が抜ける。その角に、小さな灯がある。 「谷九 ふる里」 古びた黄色い提灯が、朝も夜も変わらずそこにぶら下がっている。文字は薄れ、看板の端は少し黒ずんでいるのに、なぜだろう…
通天閣のアーチをくぐると、古びたアスファルトの上に「喫茶ブラザー」の文字が見えてくる。 ガラス越しに並ぶ食品サンプルは、どれも少し色褪せているのに、妙に食欲をそそる。ショーケースの横には季節の花が咲き、入口のマットには“Welcome”の文字。この…
通天閣の足元に、ひっそりと緑の縞模様をかかげた店がある。「ドレミ」と書かれた文字が、音符のように壁の上で揺れている。1967年の創業。かつてここは「ニューワールド写真館」だったという。亡くなった前店主がシャッターを切っていたその場所に、今はコ…
大阪・新世界。串かつの香りとソースの熱気が満ちる通りを抜けると、時の流れがふっと緩む一角がある。ジャンジャン横丁は大正時代から続く商店街。呼び込みの三味線の音がジャンジャン響いたことから名付けられた。せま〜い商店街に古き店が並ぶ。そこに、…
通天閣本通商店会を歩いていると、マドンナの『Like a Virgin』が流れてきた。場末のスピーカーから漏れる旋律が、この街の匂いと不思議に調和する。新世界は祭りのような場所だ。初夏は愛染娘が主役を張り、串かつは恋の導火線。70を超える串かつ屋がひしめ…
朝が遅い街、新世界。その中で、まだ眠気の残る路地に、いちばん早く灯りをともす店がある。午前六時。珈琲専科フーケ。 看板の「珈琲専科」という響きが、どこか古い文学の匂いを運んでくる。 外観は煉瓦造り。扉の脇には植木鉢が並び、女将さんが水をやる…
新世界という町に降り立つと、時間の感覚が曖昧になる。昭和の残り香と観光地の喧騒が、ねじれるように入り混じっているからだ。通天閣を仰ぎ見て一息つくと、路地の一角に「ぎふや本家」の暖簾が現れる。 大正5年、1916年の創業。初代通天閣が建てられたわ…
通天閣本通り商店街を歩いていると、きらびやかな看板や観光客のざわめきに目を奪われがちだ。 ふと視線を落とすと、小さなフクロウの置物がこちらを見つめている。その横にかかる木の看板に、静かに「とんかつ割烹 車屋」と刻まれている。2005年に開業した…
通天閣の灯りが宵闇に浮かび上がる頃、その足元の路地に「うさぎや」はある。昭和26年に暖簾を掲げてから60余年、今なお鉄板の音を響かせる、新世界で最も古いお好み焼き屋だ。 店の外には提灯が灯り、木目の看板に染み込んだ年月が、町の記憶そのもののよう…
日本一おいしいハンバーガー屋さんが京都にある。アメリカの濃厚民族な味ではなく、京都の侘び寂びを体現したハンバーガー。 店の名は、「COFFEE&HAMBURGER ROND.E(ロンデ)」。白壁に黒枠の小さな建物。どこか欧州の片田舎を思わせる趣。入り口のベンチに…
心斎橋の喧騒から少し外れ、大宝寺通りを北に入った横丁に、1974年創業の喫茶館「麓鳴館(ろくめいかん)」はひっそりと佇んでいる。レンガ造りの外観は時代の流れをまとい、古びたというよりは歴史を刻んだ重厚さを放つ。 扉を開けると、アンティークな内装…
大阪・中央区瓦屋町、高津宮のすぐそばにある「珈琲館 茶珈(チャコ)」は、1980年の創業という老舗の喫茶館。高津宮まで足を伸ばすと一気に飲食店が少なくなるが、その静けさの中にこの店は佇んでいる。 「喫茶店」ではなく「喫茶館」と名乗るところが、な…
1969年、大阪・京橋に誕生した「大阪王将」。その2年前、京都で生まれた「餃子の王将」とルーツを同じくするが、現在はまったくの別会社として歩んでいる。 京都発祥の「餃子の王将」が“安さ・ボリューム・スピード”で勝負してきたのに対し、大阪王将は“家庭…
御堂筋の並木が、初秋の風に少しだけ肩を落とす。神戸でのゴッホの帰り、街路樹の緑さえどこか油彩の厚みを帯びて見える。土曜の午前、車は粛々と流れ、人の歩調はそれよりわずかに遅い。信号が青になるたび、大阪の中心に吸い込まれていく。 角を折れて道頓…
金久右衛門(きんぐえもん)という名は、道頓堀によく似合う。創業は1999年7月、比較的新しい存在だが、大阪のラーメン文化を語る上で欠かせない存在に成長した。 道頓堀店は2011年末にオープン。ラーメン激戦区の中心にありながら、深夜も営業し続け、金曜…
なんば・法善寺横丁の顔ともいえる老舗甘味処が「夫婦善哉」だ。創業は1883(明治16)年。文楽の太夫・竹本琴太夫こと木文字重兵衛が「お福」の屋号で始めた店が原点で、現在は法善寺・水掛不動尊のとなりに暖簾を掲げる。 織田作之助の小説『夫婦善哉』の舞…
大阪・日本橋。アニメやフィギュア、カードショップ、メイド喫茶で賑わうオタロードの北端に、昭和の時間を刻み続ける純喫茶がある。その名は「喫茶オランダ」 創業は昭和29年(1954年)。なぜ「オランダ」かといえば、江戸時代にオランダを通して西洋文化が…
ホルモンらーめん8910(白寿)は、大阪を中心に展開するラーメンブランドで、店名のとおり、“ホルモンらーめん”を看板商品とする。甘みのある牛骨出汁をベースに、コシの強いストレート麺と、ぷりぷりでコラーゲン豊富なホルモンを組み合わせた一杯は、濃厚…
清風高校の土曜授業が終わると、上本町から自然と足は「らーめん亀王」へ向かった。𠮷野家は清風生で埋め尽くされていたため、選択肢は亀王か伊勢屋の天ぷらうどん。週末のご褒美に瓶のコカコーラと一緒に頼む「ちゃあしゅう麺」は格別で、ラーメンに具は要…