食いだおれ白書

世界を食いだおれる。世界のグルメを紹介します。孤高のグルメです。

2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧

「花丸軒 難波・法善寺店」〜精肉直営の目利きが生んだ浪速とんこつ、24時間、道頓堀の疲れを癒す一杯

大阪・ミナミの法善寺横丁のすぐ近くに暖簾を掲げる「花丸軒 難波・法善寺店」は、精肉業をルーツに持つ株式会社アラカワフードサービスが展開するラーメン店。創業は1978年、養豚場を営んでいた家業から派生して食肉卸売業を立ち上げ、その後「ラーメン豚吉…

暮秋の道頓堀〜光と匂いの街を歩くクロニクル

10月28日。暦の上では暮秋。いつ秋が来たのかもわからぬまま、夏の熱が去りきらず、朝晩の風だけが急に冷たくなった。初秋も仲秋も飛び越えて、気づけば季節は晩秋になっていた。 午後3時。傾き始めた陽の光が、道頓堀川をゆっくりと撫でていく。水面には、…

あづま食堂〜塩の一滴に宿る、雨の湯気、昭和の出汁

通天閣の膝元。雨の朝、路地の石畳がしっとりと濡れている。その一角に、白い暖簾を掲げた小さな店がある。 「あづま食堂」 昭和28年創業。七十年の時を超えて、いまも湯気の立つ台所を守っている。 入口の横には、年季の入った木札のメニュー。「玉子丼」「…

喫茶アドリア〜琥珀色の朝、光の濃縮と、日本橋の静けさ

日本橋の裏通りを歩いていると、瓦屋根が少し垂れた古い家並みに目が止まる。赤茶のレンガ、木の扉、そして小さく掲げられた緑の看板。 「喫茶 アドリア」。 創業は昭和53年(1978)。店名は、イタリアのアドリア海に由来するという。名付けたのはご主人のお…

Coffee Box「BAROQUE vol.2」〜エルヴィスが見守る珈琲の箱

谷町九丁目の交差点は、朝と夜でまったく顔を変える。通勤のざわめきが過ぎ、日が傾くころになると、街の音はゆっくりと深呼吸をはじめる。 その谷町筋沿いに、黒い看板が静かに浮かび上がる。「COFFEE BOX BAROQUE VOL.2」—白い文字が、少しだけ風に揺れて…

たこ焼きの元祖『会津屋』〜ソースなしで勝負する、大阪粉もん文化の源流

大阪・西成区玉出に創業した「会津屋」は、高校生の頃から大阪府立体育会館でプロレスを観に来るたびに訪れた聖地。 昭和8年(1933年)に遠藤留吉が屋台を出したのが始まりである。翌年には大阪・西成の今池に移転し、昭和10年(1935年)に「たこ焼き」を誕…

千日前『松屋うどん』〜安い、旨い、温かい、200円で満たされる幸せ

千日前を歩いていると、ふと道具屋筋に足が向く。食器や調理道具の専門店が並ぶこの通りは、観光客にも料理人にも人気のスポットだ。その一角に、古びた佇まいながらも多くの人を引き寄せる一軒の店がある。「松屋うどん」だ。 外には食券機が設置され、暖簾…

「谷九ふる里」〜夜に咲く朝顔、うどん出汁の香りに、寿司がとける

天王寺七坂のひとつ・源聖寺坂(げんしょうじざか)を登りきると、谷町筋に風が抜ける。その角に、小さな灯がある。 「谷九 ふる里」 古びた黄色い提灯が、朝も夜も変わらずそこにぶら下がっている。文字は薄れ、看板の端は少し黒ずんでいるのに、なぜだろう…

喫茶ブラザー: 通天閣の影に灯る、やさしき朝の光

通天閣のアーチをくぐると、古びたアスファルトの上に「喫茶ブラザー」の文字が見えてくる。 ガラス越しに並ぶ食品サンプルは、どれも少し色褪せているのに、妙に食欲をそそる。ショーケースの横には季節の花が咲き、入口のマットには“Welcome”の文字。この…

喫茶ドレミ〜通天閣の影に生きる、昭和の午後

通天閣の足元に、ひっそりと緑の縞模様をかかげた店がある。「ドレミ」と書かれた文字が、音符のように壁の上で揺れている。1967年の創業。かつてここは「ニューワールド写真館」だったという。亡くなった前店主がシャッターを切っていたその場所に、今はコ…

千成屋珈琲〜時間を凍らせるミックスジュース

大阪・新世界。串かつの香りとソースの熱気が満ちる通りを抜けると、時の流れがふっと緩む一角がある。ジャンジャン横丁は大正時代から続く商店街。呼び込みの三味線の音がジャンジャン響いたことから名付けられた。せま〜い商店街に古き店が並ぶ。そこに、…

串かつだるま 新世界総本店〜串の一本に昭和の情熱を込めて

通天閣本通商店会を歩いていると、マドンナの『Like a Virgin』が流れてきた。場末のスピーカーから漏れる旋律が、この街の匂いと不思議に調和する。新世界は祭りのような場所だ。初夏は愛染娘が主役を張り、串かつは恋の導火線。70を超える串かつ屋がひしめ…

「珈琲専科 フーケ」〜 通天閣の影にひっそりと灯る朝の時間

朝が遅い街、新世界。その中で、まだ眠気の残る路地に、いちばん早く灯りをともす店がある。午前六時。珈琲専科フーケ。 看板の「珈琲専科」という響きが、どこか古い文学の匂いを運んでくる。 外観は煉瓦造り。扉の脇には植木鉢が並び、女将さんが水をやる…