
大阪・ミナミの千日前に店を構える「作ノ作」。創業以来10年以上の歳月を重ね、今や浪花とんこつラーメンの名を全国に知らしめる存在となった。店内はカウンター15席のみの小さな空間ながら、昼夜を問わず客足が途絶えない。24時間営業・無休という頼もしさもあり、食いだおれの街を訪れる人々にとっては“いつでも戻れる場所”として親しまれている。

この店のこだわりは何よりもスープにある。豚のげんこつや背骨をベースに、上質な鶏ガラをブレンドし、特製の大釜で8時間以上かけてじっくり煮込む。灰汁をひと時も休まず取り除き、温度管理に細心の注意を払うことで、素材の旨味を極限まで引き出しながらもクセのないまろやかさを実現する。そのスープに合わせるのは、熟成を重ねた特製醤油かえし。昭和40年代に大阪で生まれた浪花とんこつラーメンの流れを汲みつつ、現代にふさわしい後味のすっきりした一杯を完成させた。

具材へのこだわりも徹底している。チャーシューは宮崎県や鹿児島県産の国産豚を使用し、赤玉の「頑固卵(がんこ村のしあわせ卵)」を使った味玉は、スープとの相性が抜群である。看板メニュー「浪花とんこつ」は920円、柚子の香りが爽やかな「ゆず塩とんこつ」は950円、濃厚な「金の味噌とんこつ」は1000円とバリエーションも豊富だ。そして圧巻なのが「浪花とんこつ肉バカ」である。丼を覆い尽くすほどのチャーシューを盛り付けた一杯は、その迫力だけでなく、肉の旨味がスープに溶け込むことで唯一無二の味わいを生み出す。見た目に驚き、食べて満腹、満足感の極致に達するまさに“肉の祭典”であり、ここでしか体験できない大阪名物ラーメンとして名を馳せている。

1号店オープン以来、作ノ作は「うまい!」という客の一言を原動力に、さらなる高みを目指してきた。安定感ある人気を維持しつつも日々改良を重ね、素材の質、スープの仕上がり、盛り付けの迫力、そのすべてに妥協を許さない姿勢が今日の評価を支えている。

小さなカウンター席に腰を下ろし、深夜の街で一杯すするラーメンは格別であり、観光客から地元の常連までを惹きつけてやまない。食べ終えた後に残るのは、豚骨の濃厚さではなく、むしろ澄み切った余韻である。クセのない後味だからこそ、何度でも通いたくなる。

千日前の喧騒の中でふと立ち寄り、丼の底まで飲み干す。濃厚なのに澄み切る余韻。この店が大阪ラーメン文化に刻んできた時間の重みを実感する。
