食いだおれ白書

世界を食いだおれる。世界のグルメを紹介します。孤高のグルメです。

喫茶店

大阪市北加賀屋「喫茶 蘭」〜夫婦の歴史、プライスレス

恩師が本を出した。そのブックイベントが北加賀屋であり、帰りに腹が減ったので駅前の喫茶「蘭」に入った。 蘭。名前からして古風で、花のよう。字がいい。素晴らしい字面だ。柔らかくて、誇り高い。外観はギリシャ神殿ふう。柱が二本、白く立っていて、気取…

喫茶アドリア〜琥珀色の朝、光の濃縮と、日本橋の静けさ

日本橋の裏通りを歩いていると、瓦屋根が少し垂れた古い家並みに目が止まる。赤茶のレンガ、木の扉、そして小さく掲げられた緑の看板。 「喫茶 アドリア」。 創業は昭和53年(1978)。店名は、イタリアのアドリア海に由来するという。名付けたのはご主人のお…

Coffee Box「BAROQUE vol.2」〜エルヴィスが見守る珈琲の箱

谷町九丁目の交差点は、朝と夜でまったく顔を変える。通勤のざわめきが過ぎ、日が傾くころになると、街の音はゆっくりと深呼吸をはじめる。 その谷町筋沿いに、黒い看板が静かに浮かび上がる。「COFFEE BOX BAROQUE VOL.2」—白い文字が、少しだけ風に揺れて…

喫茶ブラザー: 通天閣の影に灯る、やさしき朝の光

通天閣のアーチをくぐると、古びたアスファルトの上に「喫茶ブラザー」の文字が見えてくる。 ガラス越しに並ぶ食品サンプルは、どれも少し色褪せているのに、妙に食欲をそそる。ショーケースの横には季節の花が咲き、入口のマットには“Welcome”の文字。この…

喫茶ドレミ〜通天閣の影に生きる、昭和の午後

通天閣の足元に、ひっそりと緑の縞模様をかかげた店がある。「ドレミ」と書かれた文字が、音符のように壁の上で揺れている。1967年の創業。かつてここは「ニューワールド写真館」だったという。亡くなった前店主がシャッターを切っていたその場所に、今はコ…

千成屋珈琲〜時間を凍らせるミックスジュース

大阪・新世界。串かつの香りとソースの熱気が満ちる通りを抜けると、時の流れがふっと緩む一角がある。ジャンジャン横丁は大正時代から続く商店街。呼び込みの三味線の音がジャンジャン響いたことから名付けられた。せま〜い商店街に古き店が並ぶ。そこに、…

「珈琲専科 フーケ」〜 通天閣の影にひっそりと灯る朝の時間

朝が遅い街、新世界。その中で、まだ眠気の残る路地に、いちばん早く灯りをともす店がある。午前六時。珈琲専科フーケ。 看板の「珈琲専科」という響きが、どこか古い文学の匂いを運んでくる。 外観は煉瓦造り。扉の脇には植木鉢が並び、女将さんが水をやる…

『麓鳴館』」〜心斎橋に残る昭和の宝箱、音楽と人情が回る

心斎橋の喧騒から少し外れ、大宝寺通りを北に入った横丁に、1974年創業の喫茶館「麓鳴館(ろくめいかん)」はひっそりと佇んでいる。レンガ造りの外観は時代の流れをまとい、古びたというよりは歴史を刻んだ重厚さを放つ。 扉を開けると、アンティークな内装…

珈琲館 茶珈〜大阪・高津宮の隠れ家、瓦屋町の純喫茶オアシス

大阪・中央区瓦屋町、高津宮のすぐそばにある「珈琲館 茶珈(チャコ)」は、1980年の創業という老舗の喫茶館。高津宮まで足を伸ばすと一気に飲食店が少なくなるが、その静けさの中にこの店は佇んでいる。 「喫茶店」ではなく「喫茶館」と名乗るところが、な…

喫茶オランダ〜昭和29年創業、難波の路地裏に灯り続ける、珈琲と夫婦の物語

大阪・日本橋。アニメやフィギュア、カードショップ、メイド喫茶で賑わうオタロードの北端に、昭和の時間を刻み続ける純喫茶がある。その名は「喫茶オランダ」 創業は昭和29年(1954年)。なぜ「オランダ」かといえば、江戸時代にオランダを通して西洋文化が…

大阪・難波「カフェ英國屋」〜喫茶文化を守り続ける高級カフェの世界

なんば駅周辺を歩いていると、1968年にできた「カフェストリート」と呼ばれる通りに出会う。御堂筋と戎橋商店街を結ぶ石畳の小道で、シックでおしゃれな店が所狭しと並び、歩いているだけでどこか異国を旅している気分になる。 その7年前にできた喫茶店で、…

千日前・丸福珈琲店〜道頓堀を支えて一杯、昭和の残り香とともに

大阪・ミナミの千日前に佇む「丸福珈琲店」。創業は昭和九年(1934年)、鳥取出身の伊吹貞雄氏が最初に暖簾を掲げたのは新世界だった。 戦後になって現在の千日前に移り、以来、道頓堀の街とともに歩んできた。パリにムーラン・ルージュがあるように、道頓堀…

純喫茶アメリカン〜道頓堀に息づく、懐かしさと気品の純喫茶

大阪・なんばの中心に佇む「純喫茶 アメリカン」は、昭和21年に創業した老舗の喫茶店。戦後間もない時代に「美味しい料理で人々を元気づけたい」という祖父母の想いから始まり、現在は三代目がその精神を受け継いでいる。 当初は「花月」という屋号で営業し…

レコード喫茶 グラフィティ〜なんば発、音と果実のタイムマシン、みっくすじゅーすの楽園

なんば駅周辺をぶらぶら歩いていると、「カフェストリート」と呼ばれる通りに出会う。御堂筋と戎橋商店街を結ぶ石畳の小道で、シックでおしゃれな店が所狭しと並び、歩いているだけでどこか異国を旅している気分になる。 1968年創業の老舗『Café The Plant R…

珈琲をめぐる冒険:One More Cup Of Coffee

底冷えの如月も残り3日となった令和四年2月26日(土)。珈琲に呼ばれて浅草へ向かった。友人がBOOK STOREの2階を借りて珈琲屋を開店。 "こたつのように温かい場" を創りたいことから「KOTABA COFFEE」と命名。月に一日だけの限定オープン。日は決まっていな…

カフェ・クリスティ〜ヨーロッパの森に迷い込んだ小牧の朝

その喫茶店は、ヨーロッパの森に迷い込んだような佇まいをしていた。 小牧市。織田信長が城を構えた街に、赤レンガと塗り壁の、優しくてちょっと不思議な建物がある。名前は「カフェ クリスティ」。可憐で、少し気取ったような響き。 営業時間は、毎日AM7時…

Cafe HAITI|カフェ・ハイチ〜かぐわしき喫茶店

外国人観光客、営業帰りのサラリーマン、これからどこかへ向かう女性たち。平日も祝日も関係なく、新宿はいつも騒がしい。 「Cafe HAITI|カフェ・ハイチ」 新宿のど真ん中にありながら、この静けさ。どこか懐かしい店の佇まい。落ち着いた壁の色、アンティ…

カフェダイニング 529 (ごふく)上尾カレー、春の忘れ物と先輩クライマー

桜が散りはじめる4月半ば。埼玉の川越や上尾の河川敷では、菜の花が一面に咲き、目を潤してくれる。 先週、群馬県の万座温泉に連れて行ってもらった帰り、うっかり先輩の車にNikonのデジカメを忘れてしまった。日曜日、西大宮までそれを取りに行き、一緒に昼…

法善寺横丁の宝石「アラビヤコーヒー」—大阪喫茶文化の真髄

大阪ミナミの法善寺横丁に店を構える「アラビヤコーヒー」は、1951年(昭和26年)創業の老舗喫茶店。先代の髙坂光明さんが開業し、現在は2代目の明郎さんがその味を受け継いでいる。 毎朝、自社工場で丁寧に焙煎されたコーヒー豆を使用し、アラビヤ式熱風焙…

珈琲所 コメダ珈琲店〜小倉トーストとコーヒー、名古屋の朝が仕掛ける一撃

2025年2月18日、火曜日、朝8時。名古屋・栄。夜行バスを降りた街は冷えきっていたが、光はもう春のそれだった。空はどこまでも澄んでいた。仕事に向かう人の顔はまだ半分寝ぼけている。いよいよ街が動き出す。 「コメダ珈琲 テレピア店」に向かう。大きなロ…

珈琲エーデルワイスで朝食を、小倉トーストの一息

2025年2月18日、火曜日、朝7時。夜行バスを降りたばかりの名古屋は、まだ半分眠っていた。バスタ新宿を出たのは昨夜24時15分。栄に着いたのは6時50分だった。愛知県美術館でパウル・クレー展を観る予定だが、開館は10時。コメダ珈琲店のオープンは8時。どこ…

喫茶・万平【猪苗代駅】

旅先でフラッと入る喫茶店はいいもんだ。旅という調味料が味わいを深くしてくれる。猪苗代は前・千円札の故郷。猪苗代駅からニューヨークへ旅立った。その駅前のロータリーにあるのが喫茶・万平。 お母さんは隣の会津民芸品のお店と兼業。ときどき店を往復し…

新梅田食道街〜潮屋、喫茶ドリヤード

新宿から深夜バスで梅田に来ると、忙しいサラリーマンの流れに乗って歩く。1950年に開業した新梅田食道街はJR高架下で電車のガタンゴトンが聴こえる。 潮屋 梅田店 喫茶ドリヤード 大阪ミナミの名店たち 「一つ屋根の下で狭い通路に飲食店が並んでいるから"…