食いだおれ白書

世界を食いだおれる。世界のグルメを紹介します。孤高のグルメです。

喫茶オランダ〜昭和29年創業、難波の路地裏に灯り続ける、珈琲と夫婦の物語

大阪・日本橋。アニメやフィギュア、カードショップ、メイド喫茶で賑わうオタロードの北端に、昭和の時間を刻み続ける純喫茶がある。その名は「喫茶オランダ」

創業は昭和29年(1954年)。なぜ「オランダ」かといえば、江戸時代にオランダを通して西洋文化が日本へ広がったように、珈琲の美味しさを多くの人に知ってもらいたいという願いから名付けられた。

外観は、路地裏の雑居ビルの一角に黒い看板を掲げた小さな店構え。隣には古びたコミック店が並び、昭和と平成と令和がごちゃ混ぜになった風景のなかで、オレンジ色の「喫茶オランダ」の看板が妙に存在感を放っている。

扉を開けば、そこは懐かしさと安らぎに満ちた世界。壁は濃い木目で、柔らかなランプの光が温もりを与える。赤いクッションを敷いたクラシカルな椅子、寄木張りの床、壁に貼られた記事の切り抜きや絵画が、時代を超えた空気を醸す。テレビから流れるワイドショーの音声すら、ここではBGMのように馴染んでいる。

店を切り盛りするのは、地元・日本橋で生まれ育った山田さん夫妻。常連が入ってくると「おー、おはようさん!」と声をかける明るさで、店内は一気に和む。父の代から続く焙煎の技術を受け継いだご主人は、コーヒーを淹れるときだけは真剣な表情を見せる。昔は味が悪ければ給料から380円引かれたという厳しい修行の逸話も残っている。だからこそ、今のコーヒーには確かな技術と優しさが宿っている。

名物は「自家焙煎ブレンド珈琲」。苦味が少なく、マイルドでありながらコク深い味わいが特徴だ。数量限定で、飲み物代だけで提供されるモーニングサービスも人気で、ミニサンドと果物が付く。朝7時から営業しているので、周辺の喫茶店がまだ開いていない時間帯に立ち寄る人も多い。

メニューにはブルーマウンテンやキリマンジャロといった高級豆を使ったコーヒーも並び、ソフトドリンクも豊富。

大阪名物のミックスジュース、さらにコーラとカルピスを合わせた「キューピット」など、大阪ならではの一杯も味わえる。

「ちょっとお茶でも行こうか」という気持ちで訪れてほしい、というのがこの店のコンセプト。軽食にとどめ、相席もしない。小さな空間であっても、訪れた人に心ゆくまでくつろいでもらうための心配りだ。

昭和29年の創業から70年。オタロードの喧騒を一歩抜けたこの場所で、「喫茶オランダ」は今も変わらず、温かい夫婦の笑顔と香り高いコーヒーで、訪れる人の時間をゆったりと包み込んでいる。

  • 店名:オランダ
  • ジャンル:喫茶店
  • 電話番号:06-6641-8238
  • 予約:不可
  • 住所:大阪府大阪市浪速区難波中2-1-5
  • 最寄駅:南海「難波駅」から徒歩約284m
  • 営業時間:7:00〜18:00
  • 定休日:不定休

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