食いログ
日本一おいしいハンバーガー屋さんが京都にある。アメリカの濃厚民族な味ではなく、京都の侘び寂びを体現したハンバーガー。 店の名は、「COFFEE&HAMBURGER ROND.E(ロンデ)」。白壁に黒枠の小さな建物。どこか欧州の片田舎を思わせる趣。入り口のベンチに…
東京には、数えきれないほどの名店がひしめいている。なかでもフレンチは、格式ある老舗から新鋭の挑戦的な店まで層が厚い。高級感に身構える必要はない。いまの東京フレンチは、もっと自由で温かく、料理人の哲学がストレートに皿へと現れる。 実際に訪れて…
神戸市灘区、岩屋駅前。「EIGHT BALL(エイトボール)」という名前の小さなおにぎり専門店がある。秋田県に本社を置く株式会社RICEBALLが運営し、2024年にオープンしたばかりの“ルーキー”だ。甲子園口にも系列店がある。 店名の「EIGHT BALL」は、甲子園球場…
トンカツには人を救う力がある。仕事で落ち込んだとき、イライラしたとき、いいことがあったとき、足が向かうのは新宿壱番街にある「とんかつまるや」。都内に23店舗を展開し、本店は新橋。2005年創業のローコスト・ハイクオリティなトンカツチェーン。鮮度…
タカセ洋菓子は、大正9年(1920年)に創業した老舗の洋菓子店。創業以来、変わらぬ製法と厳選された素材を用いて、手作りの味を守り続けている。 池袋本店は、JR池袋駅東口から徒歩すぐの場所に位置し、街の喧騒を抱きしめる。 ビル内には1階のパン・洋菓子…
中学・高校時代の記憶を辿ると、そこにはいつも𠮷野家がある。大吉や小吉の「吉」ではなく「土」に「口」の「𠮷」。ボクサーの辰𠮷𠀋一郎と同じ。ちなみに「丈」ではなく、右上に「、」がある「𠀋」が正しい。 上本町の𠮷牛 牛スパイシーカレー 新宿センター…
伊香保温泉のシンボルの石段は天正四年(1576年)、武田勝頼が湯元から源泉を引くために造らせた。当初は315段だったが、平成22年(2010年)に365日、賑わう願いを込めて365段になった。そんな石段の途中には足湯や休憩所などが立ち並び、フッと息をつける。…
伊香保温泉は、名湯と石段と、うどんの町である。群馬県は、全国屈指のうどん消費量を誇る「うどん県」。ひもかわ、水沢うどんが有名だが、推したいのが「伊香保うどん」 これまで旅先ごとにうどんを口にしてきた中でも、日本一に挙げたいのが創業49年の創業…
ミルクスタンドという文化がある。オタクやアイドルの聖地・秋葉原駅の総武線の上下線どちらにもある。東京に11年住んでいながら、今年初めて存在を知った。そもそも日本に「ミルクスタンド」なんて文化があるのを知らなかった。たぶん『こち亀』に登場した…
旅先で、素泊まりにするか、食事付きにするか。それは大いなるギャンブルである。近くに旨い店があれば、素泊まりは正解。だが、そうでもなかったり、コンビニ飯になると後味が悪くなる。 2025年5月30日、金曜日。午前中に訪れた彫刻の森美術館が素晴らしく…
14回目の海外旅行にして、初めて郷土料理を食べなかったオランダの旅。惜別と後悔を抱えて寄ったのが、アムステルダムのスキポール空港の入り口にある「Happy Seafood」 ニシン、タラ、ムール貝のフライ、カレイ、イカリングなど、さまざまな魚介の軽食を扱…
東京で暮らすようになってから、マクドナルドに行く機会がなくなった。唯一お世話になるのが、空港の出発前。小学生の頃、ご馳走といえば「すき焼き」か「マクド」だったが、上京してからは足が遠のいた。味は好きだが、食いしん坊が満腹になるには1000円を…
伊豆へ向かう踊り子号の車窓から熱海のブルーオーシャンが見えたとき、窓際の席にいた映画ライターの方が思い出を話してくれた。 「駅の近くに美味いラーメン屋があるんだよ。2017年に『火花』の撮影を取材したとき帰りにスタッフたちと食べたんだ。菅田将暉…
新宿・思い出横丁、もつ焼き「きくや」は1956年(昭和31年)創業。継ぎ足しのタレと特製塩が効いた串焼き、そして独自ブレンドの酎ハイで知られる。思い出横丁の柳通り(線路通り)の端っこにあり、カッコよく言えばテラス席でも食べられる。 酔いどれたちの…
神奈川県川崎市の中でも、落ち着いた住宅街として知られ、緑も多く穏やかな空気が流れる鷺沼駅(さぎぬまえき)。渋谷から田園都市線でわずか20分ほど。そんな都市の暮らしと自然のちょうど真ん中あたりに、ひとつの蕎麦屋が静かに佇んでいる。 名を「手打蕎…
まだ時代が平成だった9年前、佐倉駅に降り立ったことがある。エヴェレストから帰国し、日雇い肉体労働に汗を流した時期に派遣された場所。遠かった。地の果てまで流れ着いたような感覚だった。佐倉は長嶋茂雄さん、BUMP OF CHICKEN、そして前職の同僚女性の…
雪山と温泉の思い出を綴った『温泉クライマー』を自費出版した。執筆の日々を乗り越えたご褒美は、鳥羽周作シェフの店「sio YOYOGI UEHARA 」にしたかった。 鳥羽シェフにお会いしたことはない。シェフがYouTubeで紹介するパスタのレシピを見て、それを作っ…
コロナ禍を経て、飲食業界は大きく変わった。それまでは名声や立地の良さに頼り、味やサービスが劣っていても人が集まる店が多かった。しかし、コロナというリトマス試験紙が、本物とそうでないものを明確に分けた。左うちわの店は次々と姿を消し、本物だけ…
下呂温泉を発つ前の昼メシ。名残惜しさを抱えながら吹雪の中を歩いていた。寒さが骨まで染みる。ラーメンと迷ったが、観光地のラーメンは博打。東京と変わらない店も多い。そして、せっかくなら飛騨そばを食べておきたかった。水曜定休の店が多い中、湯の香…
下呂温泉の温泉街に夜が降りる頃、雪はやんだが、外の寒さがじんわりと体に染み込んでくる。「旅先では髪を切れ」。これは『水曜どうでしょう』の至言。髪を切りながら、その町の様子や暮らしを聞けるし、おすすめの店を教えてもらえる。 夕方5時に「CREX冨…
鶴巻温泉の「弘法の里湯」につかり、ほてった体を冬風で冷ましながら歩く。時刻は18時。もうすぐ温泉街に夜の帳が降りる。湯上がりの余韻を楽しみながら、どこかで軽く食事をと思い、ふと目に留まったのが「白鬚食堂」だった。 木目の外装に、白地に黒字のシ…
プレミア12の書籍『燃月』をリリースし、ようやく一段落。 長く続いた緊張が解け、心にぽっかりと空いたスペースを埋めるように、新宿の台湾料理店へと足を運んだ。以前から友人の女性に勧められていた店だ。 台湾代表がプレミア12で優勝を果たしたあの強さ…
2025年、7月いっぱいで新宿を離れることにした。実家の奈良に帰る。2013年11月7日に上京し、最もお世話になった飲食店が小滝橋通りにあった「なか卯」。2024年9月いっぱいで閉店してしまったが、感謝は一生消えない。 Twitterを始めた頃から、ほとんどの投稿…
JR平和駅 2024年7月18日。北海道エスコンフィールドで野球観戦した翌日、宿泊先のアークシティホテルをチェックアウト。11時1分発の千歳線に乗り、隣駅の平和駅へ向かった。徒歩でも40分ほどの距離だが、この日は気温30度の真夏日。北海道の駅間のスケールは…
東京都にある「森下」は江東区の深川にある1万人ちょっとの小さな町。特に名所もなく都民でも存在を知らない人が多い。俳優・寺島進の生まれ故郷。ジャージ姿でタバコを吸っているところを見かけ、前を通ると丁寧にお辞儀してくれた。めちゃくちゃカッコよく…
台湾で最も有名な朝ごはん。開店の5時半から大行列ができる。1時間並んでやっと入店できる。5月に広島のマツダスタジアムに行ったとき、ゲストハウスで働いていた台湾人の女の子が教えてくれた。 阜杭豆漿(フーハン・ドゥジャン)は善導寺駅の近くにある華…
神田にある「高校野球酒場・球児園」、四谷にある「あぶさん」、そして中野にある「中野塾」。東京にはステキな野球居酒屋が多い。 野球ファンの熱気あふれ、入りにくい空気の店もあるが、中野塾は最も気軽に入れる野球居酒屋と言っていい。正式名称は「少年…
川端康成の『伊豆の踊り子』、そして「天城越え」の出発地は修善寺。多くの観光客で賑わい、狭い道路は人でごった返す。そんな修善寺駅から徒歩10分ちょっとのところにオシャレすぎるカフェスペース併設の酒屋がある。 その名も「松屋商店」。いかにも酒屋の…
文章の先生と一緒に伊豆松崎へ向かう旅は格別だ。ひとり旅が99%の僕は隣に誰かがいると、逆にちょっと不安になってしまう。でも、いつも先生は笑ってくれ、ノンストップの機関銃のように愉しくゲラゲラ笑いながらしゃべり続けてくれる。明石家さんまもビック…
静岡県の伊豆、西の端に松崎という日本でいちばん小さな町がある。そこに「ル・グッテ」というステキな小さなカフェがある。松崎は東京に疲れた移住者が多い町。「ル・グッテ」は東京の浅草橋に同名のパティスリーがあり、そこで修行した女性が妹さんと2人で…