月とクレープ。
月とクレープ。Amazon Kindle 『月とクレープ。』は、2024年6月9日に発売された全28ページの短編エッセイ集です。価格は100円。著者・YAMATOが綴る、食にまつわる憶い出6篇が収録されています。 Amazon Kindleの電子書籍限定の刊行で、紙の書籍はありません…
高円寺駅から徒歩5分、飲食店が所狭しと並ぶ中にあるのが、沖縄料理店「抱瓶(だちびん)」。「抱瓶」とは、泡盛を運ぶために使われた壺のこと。8年ぶりに、この店を訪れた。 年が明けたばかりの元旦。かつてスポーツ新聞の校閲部でアルバイトしていた頃、上…
コロナ禍を経て、飲食業界は大きく変わった。それまでは名声や立地の良さに頼り、味やサービスが劣っていても人が集まる店が多かった。しかし、コロナというリトマス試験紙が、本物とそうでないものを明確に分けた。左うちわの店は次々と姿を消し、本物だけ…
大久保駅南口を出ると、サラリーマンたちが波のように押し寄せる。そんな喧騒を抜けて数歩、ビルの隙間にぽつんと佇む「ネパールツロ」の看板が目に入る。まるでネパールの山岳地帯に点在するロッジのように、そこだけぽっと温かい灯りがともっている。 2016…
ネパールを二度訪れ、エヴェレストのベースキャンプで1ヶ月間暮らした経験があるせいか、よく「おすすめのネパール料理は?」と訊かれる。そのたびに、迷わず紹介する店がある。『ナングロガル』──東京・新宿区、新大久保にある本格ネパール料理の店だ。 住…
1年に一度だけ会う「彦星」がいた。ひこぼし。そう、男性だ。七夕ではなく、年が明けたばかりの深夜2時、天の川は高円寺の沖縄居酒屋「抱瓶(だちびん)」。東京に本店を構え、那覇に支店を持つ不思議な店。エイサー姿のスタッフが、小さな沖縄を都会に運ん…
2013年の秋、奈良を後にし、週刊プロレスの記者を目指して上京した。30歳、ライター未経験の自分が頼るものは何もない。北新宿のアパートに着いた日、編集部に電話をかけた。受話器越しの返事は冷たかった。「仕事は募集していない」。「何もかも捨ててきた…
人生で一度は味わいたい料理があった。 「日本料理 龍吟」の山本征治が生み出す一皿。 きっかけは、上京直前に何気なく見たNHKの『プロフェッショナル』。そこには、門外不出とされるレシピを、普及前のYouTubeで惜しみなく公開する料理人の姿があった。「日…
世界でいちばん美しい白銀が視界いっぱいに広がる。雪に染められたチョモルンマ。どこまでも高く、厳然とそびえるその姿は、まるで天を目指して建てられたバベルの塔のようだ。その冷たくも凛とした威厳が、訪れる者の心を揺さぶる。10月のアドバンス・ベー…
テントを出た瞬間、息を呑んだ。夜の22時半だというのに、まるで夕方のような明るさ。月光がこれほど眩しいものだとは知らなかった。天体観測用のカメラを抱えてきたが、星なんてどこにも見えない。上弦の月がこれだけ輝くのだから、満月になったらどれほど…
子どもの頃、母の作るカレーが好きだった。ウチはバーモントカレーの中辛。にんじん、たまねぎ、鶏肉を大きめに切り、香ばしく炒めてから煮込む。隠し味は市販のマギーブイヨン。煮立った鍋にルーを溶かし、最後に加えるジャガイモがほっくり仕上がる。母自…