
東京で暮らすようになってから、マクドナルドに行く機会がなくなった。唯一お世話になるのが、空港の出発前。
小学生の頃、ご馳走といえば「すき焼き」か「マクド」だったが、上京してからは足が遠のいた。味は好きだが、食いしん坊が満腹になるには1000円を超える。ちょっとした贅沢だ。
成田空港には飲食店がたくさんあるが、うどん1600円、カツカレー2400円、ラーメン1400円…と、旅人泣かせの価格。マクドは今でも軽食を500円以下で提供してくれるありがたい存在。

ソーセージエッグマフィンのセット(640円)。ユーロに両替したお釣りが750円だったので、その範囲で。空港価格で少し割高かもしれないが、コーヒーのサイズが大きいのが嬉しい。出発前の不安を抱えた体に、マクドが少しだけ安心感をくれた。感謝。
オランダ紀行:備忘録

この文章を書いているのは、オランダへ旅立つ2時間前。成田空港第1ターミナル、17番ゲート前の椅子に座りながら。
令和7年4月21日、月曜日。朝5時に起床。バスタ新宿7時40分発の成田空港行きに乗るまで、二度寝・三度寝を繰り返し旅立ちの時を待つ。
荷物は軽い。いつも仕事に行くリュックに、PCとiPad、充電器。侍ジャパンのトートバッグには3日分の着替えと、原田マハの小説『常設展示室』。天気は雲ひとつない快晴なのに、気持ちは重い。青空の憂鬱が広がる。ワクワク感はなく、早く終わって欲しいと願っている自分が嫌になる。
往復の航空券と4日間のホテル代で67万円。美術館や現地の食費など諸経費を加えたら100万円を超える。10年以上、加入していた生命保険を解約して実現した旅。頼まれた取材でもなく自分で希望したもの。友人は、わざわざ美術館のチケットを探してくれた。
本の取材で3年連続でアメリカや韓国、台湾などを飛び回ってきた。日本にいても、新宿にじっとしている時間のほうが少ない。移動と執筆の繰り返し。旅慣れているはずなのに、心も身体も疲れ気味なのかもしれない。贅沢すぎる憂鬱。こんなこと書いたらバチがあたるが、正直に書こうと思う。そして、1日1枚の絵をかきあげたゴッホのように耐えなくては。

旅は6日間。片道14時間のフライトに、乗り継ぎを含めると2日は移動に費やされる。初日は夜の到着、最終日は朝の出発なので、現地で行動するのは3日間。限られた時間で、5つの美術館を巡る。
初めてのヨーロッパは、アラン・ドロンの故郷フランスか、パスタの国イタリアか、何もかもが憧れのスペインか、映画『灰とダイヤモンド』のポーランドにしようと思っていたが、どれでもなくオランダになった。10月に出版する美術本のためだ。
バスタ新宿の待ち時間、原田マハの『常設展示室』を読み進める。少し気分が落ち着いた。本は情報だけでなく、不思議な力がある。自分が書く本も、いつか誰かの気分を安らげるようになればと願う。
予定より早くバスが成田空港に到着。南ウイングでグローバルWi-Fiを借り、北ウイングへ移動してチェックイン。自動発券機で手続きを進めたが、「席が確保できません」と表示された。係員に相談すると、仮の搭乗券を渡され、「とりあえず出国ゲートへ行ってください」とのこと。どんな席になるのやら…。

出国審査を終え、両替カウンターでユーロに換金。為替レートは1ユーロ=167円の円安。7万円分を両替しようとしたら、「7万245円にするとレートが少し良くなります」と言われ、千円札を追加。お釣りでマクドの朝食セットを買った。

出発まであと2時間。アムステルダムは雨の予報。機内に日本人乗務員はいないらしい。
借りたばかりのグローバルWi-Fiの説明書を読みながら、これから始まる空の旅に思いを馳せる。どうなるかわからないけれど、なるようにしかならない。Bon Voyage。
台湾の空港メシ
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食の憶い出を綴ったエッセイを出版しました!

『月とクレープ。』に寄せられたコメント
美味しいご飯を食べるとお腹だけではなく心も満たされる。幸せな気持ちで心をいっぱいにしてくれる、そんな作品。
過去を振り返って嬉しかったとき、辛かったときを思い出すと、そこには一生忘れられない「食」の思い出があることがある。著者にとってのそんな瞬間を切り取った本作は、自分の中に眠っていた「食」の記憶も思い出させてくれる。