
伊豆へ向かう踊り子号の車窓から熱海のブルーオーシャンが見えたとき、窓際の席にいた映画ライターの方が思い出を話してくれた。
「駅の近くに美味いラーメン屋があるんだよ。2017年に『火花』の撮影を取材したとき帰りにスタッフたちと食べたんだ。菅田将暉や桐谷健太は一緒じゃなかったけどね。けっこう美味いから行ってよ」

熱海は憧れの場所でありながら一度も降りたことがない。2016年にエヴェレストから帰国したとき、日本が退屈に思えた曇り目を晴らしてくれたのが踊り子号から見た熱海の海だった。こんな美しい風景、ヒマラヤにはない。やっぱり日本は最高だ。
思い出のラーメンを食べてみたい。だが、行けるとしても2、3年後だろう。そう思っていたら帰りの新幹線がストップ。熱海で足止めになり、「あのラーメン食べようぜ」と、まさかの翌日に行けることになった。

雨風本舗(あまから ほんぽ)は熱海の駅前商店街の中にある。昭和を真空パックしたようなボロい佇まい。よく、ここに入ろうと思ったもんだ。店内は大相撲中継。当然お客さんは、おっちゃんたち。女性ひとりでは入りにくい雰囲気。

“昔ながら”のラーメンは多いが、そのまま”昔”の美味しさ。醤油一本勝負。もちろん、他の出汁と合わさって洗練された令和の味。だが、味わいが「昭和」。昭和風ではなく、昭和。

塩味が効いたチャーハンの絶品。醤油と最高にマリアージュする。けしからん旨さ。

21時半にやっとの思いで到着したら、映画で観るような祟りとしか思えない雷雨。雨風本舗の言魂ラーメン、言魂チャーハンの力は偉大なり。
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『月とクレープ。』に寄せられたコメント
美味しいご飯を食べるとお腹だけではなく心も満たされる。幸せな気持ちで心をいっぱいにしてくれる、そんな作品。
過去を振り返って嬉しかったとき、辛かったときを思い出すと、そこには一生忘れられない「食」の思い出があることがある。著者にとってのそんな瞬間を切り取った本作は、自分の中に眠っていた「食」の記憶も思い出させてくれる。