底冷えの如月も残り3日となった令和四年2月26日(土)。珈琲に呼ばれて浅草へ向かった。友人がBOOK STOREの2階を借りて珈琲屋を開店。
"こたつのように温かい場" を創りたいことから「KOTABA COFFEE」と命名した。一ヶ月に一度だけの限定オープン。日は決まっていない。毎月、珈琲豆の種類も衣替えする。その珈琲はその日だけの味。儚さも味覚となる。
手軽に飲める自販機やコンビニのコーヒーも好きだが、彼女が淹れてくれる珈琲はもっともっと大好きだ。ブラックが飲めない自分が砂糖やミルクを混ぜないほうが美味しいと思える。珈琲は苦味でも甘味でもなく酸味が真髄。だから彼女は「コーヒー」から「珈琲」へ翻訳してくれる通訳だ。
KOTABA COFFEEは、モダンアートの絵画に囲まれた壁に、畳を敷いた不思議な空間。茶人のように正座しながらお客様を迎える。
注文してからミルで豆を挽き、豆がビックリしないように、最初のお湯は少量。美味しい珈琲になるためのストレッチ。
ポコポコと香り立つ泡に耳をすませ、少しずつ、少しずつ温度調整したお湯を注いでいく。この手間がコーヒーの眠っている滋味を覚ます。その真剣な眼差しに見惚れながらじっと待つ。
彼女の眼を射止めたエチオピア珈琲の豆は、スッキリして飲みやすい。深く、一途。口に含んだ瞬間、フッと心が浮き上がる。シンプルな工程だからこそ、真心が伝心する。
お客様に悦んでもらおうと焼いてくれたサプライズのパウンドケーキは雑味が一切なく、赤ん坊のように柔らかい。お茶菓子を添えるだけで珈琲は深く前進する。珈琲をめぐる冒険は終わらない。