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食いだおれ白書

世界を食いだおれる

カレーの食卓

2年連続で年末年始は実家に帰省した。母親がカレーを作ってくれた。

ウチは昔からバーモントカレー の中辛。にんじん、たまねぎ、鶏肉を炒め、水と一緒に市販のマギーブイヨンとカレーのルーを入れる。たっぷりの具材を煮込んだら最後にジャガイモを加える。これが松田家の食卓。

あまりカレーが好きでない母親は僕や弟が帰省したときだけ作ってくれる。東京ではネパールのダルバートひよこ豆のカレー)しか食べない僕だが、母親のカレーを見るとホッとする。

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周りを見ているとカレーに刺激を求めるひとが多い。けど、40歳を目前にしても大人への入学式を拒否している自分にとって、カレーに欲しいのはやさしさ。刺激は食べもの以外で十分に痛感している。せめて体内に入れるものはやさしいものであって欲しい。

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母親のカレーを食べると思い出すのが地元・桜井市にあったカレー屋さん「スパイシー」

元フレンチのシェフだったオーナーが独立され、ご夫婦で営んでいた。十数種類のスパイスを独自にブレンドし、田舎町に似合わない高級感のあるカレー。そこがよかった。1,000円前後の価格も奈良の片田舎では珍しく、休日のご褒美でいてくれた。

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場所は桜井商業という巨人にいた駒田徳広の母校のすぐ近く。車がないと行きにくい場所で、ご夫婦の静かな人柄といい、隠れ家というありきたりな形容が似合うお店だった。

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父はいつもカツカレー、母親はシーフードカレー。僕や弟はチキンカレーや野菜カレーなど色んな種類をサーカスする。

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当時、辛いものが苦手だった僕にとって「普通」より甘口の「マイルド味」があるのが助かった。今思えば、お店の名前と同じスパイシーなカレーも食べておけばよかった。

2012年1月に閉店。ふるさとの誇りとして自慢できた数少ないお店だった。もう10年以上が経つ。時の流れは早いのか遅いのか。

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周りは高校だったので、学生には手が出なかったのだろう。料理の腕と商売の腕は一致しない。そんな世の中だからこそ、スパイシーのようなカレー屋さんがなくなったのが寂しい。今ごろシェフご夫婦はなにをしているのだろうか。カレーでなくてもなにか料理を作っていてくれたらと願う。