大阪のラーメン=金龍ラーメンである。決して食べログ百名店に入る店ではない。「飲み会のシメ」「観光途中の軽食」「サクッとラーメンを食べたいとき」 にぴったりなラーメン。だから愛される。難波の狭い食いだおれエリアだけで5店舗もある。
金龍ラーメンの魅力
無料トッピングが豪華
金龍ラーメンは、キムチ・ニラ・ニンニク・ネギ がセルフで取り放題。ラーメンの味を自分好みにカスタマイズできる。ガッツリ食べたい人は、ニンニクとニラをたっぷり入れる。
24時間営業の店が多い
ほとんどの店が24時間営業でコンビニ状態。朝ラーメンから深夜の飲み会帰りのシメにもぴったり。胃に優しいあっさり豚骨スープが、疲れた身体をじんわりと温める。
オープンスタイルの座敷で食べるラーメン
店内にはカウンター席もあるが、名物なのが 開放的な座敷席。まるで屋台のような雰囲気で、大阪らしい気取らない空間が広がっている。
メニューとおすすめの食べ方
- ラーメン(並)
- チャーシューメン
- ご飯(おかわり自由)
金龍ラーメンのメニューはとてもシンプル。スープは豚骨醤油ベースで、クセがなく飲みやすい味わい。細めのストレート麺がスープに絡み、「ああ、大阪ミナミに来たな」と実感する。無料のキムチとニラを入れれば、スープにピリッとしたアクセントが加わり、一味違う旨さを楽しめる。
道頓堀本店
相合橋の先にある道頓堀の本店。1982年(昭和57年)の創業。中学生か高校生のとき商店街で食べた記憶がある。そのときは美味いと思わなかった。
久しぶりに訪れたのは2022年の8月12日(金)。まだコロナ禍。誰もいないひっそりした店内。単独の朝ラーメン。これだけでこの旅は勝ちだと思えた。ラーメン800円を頼む。
金龍ラーメンは、ただの食べ物じゃない。この街の一部。ネギがどっさり、キムチも好きなだけ入れ放題、ニラもぶちこめ。そうやってカスタムするのは、道頓堀の雑多なエネルギーそのもの。トッピング自由自在。大阪の夜が持つ、自由でやんちゃで、だけど憎めないあの感じ。そのエッセンスが、どんぶりの中に凝縮されている。
それをズズッとすする。口の中に広がる豚骨の余韻と、キムチのピリ辛。もう完全に大阪。美味すぎるわけでもないのに、すとんと腑に落ちる。胃に収まる。大阪に収まる。これは道頓堀そのものだ。派手でごちゃごちゃしていて、ガツンときて、だけど最後にはスッと馴染む。洗練された美味さとは違う。もっとこう、雑に惹かれる味。超絶美女よりも気の合う幼なじみを好きになるみたいな。ほっとするけど、また食べたくなる、忘れたころにふっと思い出す。そんなラーメン。
難波千日前店
- 次に訪れたのが2024年3月7日(水)。侍ジャパンの野球観戦のあと23時前。球場でタコ焼きしか食べていないので猛烈に腹が減った。金龍ラーメンの明かりに吸い込まれる。
800円。考えすぎない。迷わないキムチ? 紅生姜? 今日はいい。何も入れない。余計なものはいらない。まっさらなままの金龍ラーメン。それが今の気分にぴったりだ。
目の前に置かれるシンプルな一杯。技巧を凝らした最新鋭のラーメンとは違う。これはもう、ラーメンというよりも「金龍」という食べ物。どこかインスタント感があるのも悪くない。いや、むしろ、それがいい。気取らない。着飾らない。ただ、道頓堀の空気とともにそこにある。
あっさりとした豚骨の香りがじんわり広がる。深みとか、こだわりとか、そんなものを求めるラーメンじゃない。ただただ、この時間、この場所に馴染むラーメン。肩肘を張らずに、ただ口へ運ぶ。それでいい。それがいい。
深夜のラーメンに理屈はいらない。胃に染みるスープ、するする入る細麺、噛めばほろりと崩れるチャーシュー。それだけで、すべてが満たされる。
道頓堀の思い出
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中華の王将
大阪ブラックの物語
螺旋階段の先に広がる時間旅行
大阪きつねうどん
大阪喫茶の原点
浪花とんこつの真髄
食の憶い出を綴ったエッセイを出版しました!
『月とクレープ。』に寄せられたコメント
美味しいご飯を食べるとお腹だけではなく心も満たされる。幸せな気持ちで心をいっぱいにしてくれる、そんな作品。
過去を振り返って嬉しかったとき、辛かったときを思い出すと、そこには一生忘れられない「食」の思い出があることがある。著者にとってのそんな瞬間を切り取った本作は、自分の中に眠っていた「食」の記憶も思い出させてくれる。