東京は、言わずと知れた“カレー天国”。インド、ネパール、スリランカの本格スパイスから、昭和の老舗が守り続ける欧風カレーまで。街を歩けば、皿の上に世界が広がる。
12年間、東京に住み、数百軒以上のカレー屋を巡った中から、本当に「おすすめできる」と確信した店だけを厳選。スパイスの熱狂、伝統の深み、そして進化の物語。食べれば胃袋だけでなく、記憶にも焼きつく一皿ばかりだ。
ここに紹介するのは、東京で“絶対に食べるべき”カレー10選。新宿・渋谷・神保町・恵比寿。街の風景とともに味わう名店を、ランキング形式でお届けする。
- 1位:新宿「FISH 新宿店」
- 2位:新宿「スパイシーカリーハウス 半月」
- 3位:恵比寿「ソルティーモード」
- 4位:北新宿「Spice Bar モンカリー」
- 5位:渋谷「ムルギー」
- 6位:大久保「ナングロガル」
- 7位:青山「天馬」
- 8位:大久保「ネパールツロ」
- 9位:鷺ノ宮「カレーや うえの」
- 10位:神保町「ボンディ 神房」
1位:新宿「FISH 新宿店」
東京でナンバーワンのカレーは、新宿最強のフィッシュカレー。西新宿・小滝橋通り沿いに佇む、南インドカレーの名店『FISH 新宿店』。六本木アークヒルズの伝説的スタンドカレーを引き継いだ店舗として、2018年に復活。以来、スパイス好きを魅了し続けるカレーの“金字塔”だ。
店内はミントグリーンを基調に、どこかレトロで清潔感ある落ち着いた雰囲気。スパイスの香りがふわりと立ちこめ、胃袋だけでなく感性までも刺激してくる。
おすすめは看板メニュー「2代目フィッシュカレー」。揚げたてサクサクの白身魚が驚くほどジューシーで、濃厚な旨味とスパイスの辛味が絶妙に絡み合う。ライスや副菜とのバランスも秀逸で、スプーンが止まらない。スパイス界の“下剋上”とも呼ぶべきインパクトだ。伝説の味は皿の上に今も息づいている。新宿でスパイスカレーを語るなら、まずはこの一皿を。
店舗情報
- 店名:FISH 新宿店(フィッシュ)
- 住所:東京都新宿区西新宿7-5-6 新宿ダイカンプラザ756 2F
- アクセス:JR新宿駅西口から徒歩8分/西武新宿駅から徒歩5分
- 営業時間:11:30〜15:00/17:30〜21:00
- 定休日:日曜
2位:新宿「スパイシーカリーハウス 半月」
東京で2番目に美味しいカレーも新宿。路地裏に咲く、スパイスの名店。北新宿・百人町の交差点近く。細い路地にひっそりと佇む『スパイシーカリーハウス 半月』は、静けさの中にスパイスの熱を秘めた名店。パステルブルーの扉と、黄色い看板が目印の店は、2017年に創業して以来、独自の創作性と味でファンを魅了してきた。
店内はコンパクトながら居心地がよく、音楽や装飾にもセンスが光る。メニューは「チキンカレー」「日替わりカレー」「2種盛り」の3種類とシンプル。その分、料理に対する誠実さと集中力がうかがえる。
おすすめは「2種盛り」。チキンカレーは南インド・スリランカ・ネパールの要素が交錯する骨太な味。日替わりの「ココナッツビーフ」や「イカ墨カレー」は、それぞれ甘みや深み、香りの変化が楽しめ、チキンとの対比で真価を発揮する。アチャールやキャロットラペなど副菜も、全体の調和を支える大事なピースだ。
ふたつの“半月”が寄り添ってひと皿をつくり出す。満月のような満足感。スパイスカレーの新たな表現に出会える、芸術的な一軒である。
店舗情報
- 店名:Spicy Curry House 半月(スパイシーカリーハウス はんげつ)
- 住所:東京都新宿区百人町1-24-10 丸正食品センター2号館 1F
- アクセス:JR大久保駅北口から徒歩2分/JR新大久保駅から徒歩5分
- 営業時間:11:30〜15:00/18:00〜21:00
- 定休日:月曜・火曜
3位:恵比寿「ソルティーモード」
コロナ禍を経て、驚異的な進化を遂げたネパール料理店がある。恵比寿のマンションの一角にひっそり佇む『ソルティーモード』だ。2019年に訪れたときのダルバートは素朴な“家庭の味”に留まっていたが、2023年には「食べログ100名店」に選出されるほど飛躍。再訪して驚いたのは、まるで別物のように洗練されたダルバートだった。
レンズ豆のスープとカレー、アチャール、副菜、そして山盛りの米。構成は変わらないのに、スパイスの調和と旨味の深さが圧倒的に進化している。クセを抑えつつも個性を残し、「浄化」を超えて「昇華」した味わいは、ネパール料理の枠を超えた“究極系”とも呼べる仕上がりだ。白ワインとの相性も抜群で、食べる者を夢中にさせる。
ぜひ一緒に注文したいのが「フライドモモ」。カリッと香ばしい衣に包まれたジューシーな餡が、ダルバートに絶妙なアクセントを添える。
一度は「もう来ない」と思った店が、試練を経てここまで進化するとは。一皿に込められた物語ごと味わいたい名店である。
店舗情報
- 店名:ソルティーモード
- 住所:東京都渋谷区恵比寿南1-18-11 西田ビル 202
- アクセス:JR恵比寿駅西口から徒歩3分
- 営業時間:11:45〜15:00/17:00〜22:00
- 定休日:月曜
4位:北新宿「Spice Bar モンカリー」
4位は再び新宿。ここは、北新宿に潜むスパイスの爆心地。北新宿の静かな住宅街。その一角にぽつりと現れる黒いテントと小さな店構え。そこが、2022年にオープンしたスパイスカレーの名店『Spice Bar モンカリー』。街の喧騒から離れた場所ながら、通う者を確実に虜にする“カレーの楽園”だ。
カウンターのみの店内には、ほどよい緊張感と静けさが漂う。厨房に立つ店主は、複数の人気カレー店で修行を重ねた経験を持つ実力派。装飾を排し、無駄を省いた空間に、スパイスへの強い意志がにじむ。
おすすめは「ポークカレー」。岩手県産の岩中豚ロースをビネガーで漬け込んでからじっくり煮込んだ一品で、肉はホロホロ、脂はコク深く、酸味とスパイスが見事に調和する。長粒米との相性も抜群で、南インドの食文化を体感できる仕上がり。さらに、ナメ茸やヨーグルトなど副菜の構成も芸術的で、全体の流れを自然に整えてくれる。
食後のラッシーは、注文を受けてから丁寧にステアされる逸品で、口内をやさしく洗い流してくれる。
北新宿という静謐な土地に、異国の風と冒険心を運んでくれるスパイスの聖地。スパイスカレーの奥深さを、心から実感できる名店である。
店舗情報
- 店名:Spice Bar モンカリー(スパイスバー モンカリー)
- 住所:東京都新宿区北新宿1-30-1
- アクセス:JR大久保駅北口から徒歩4分
- 営業時間:11:30〜15:00(売り切れ次第終了)
- 定休日:火曜日
5位:渋谷「ムルギー」
昭和26年(1951年)創業、渋谷を代表する老舗カレー店『ムルギー』。ヒンディー語で「鶏肉」を意味するその名の通り、チキンカレーをベースにした一皿で70年以上愛され続けてきた。
場所は渋谷・道玄坂の百軒店商店街の奥。重厚なレンガ壁と木製の扉が歴史を感じさせるが、店内は清潔感にあふれ、時を超えて新鮮さを保っている。
看板メニューは「玉子入りムルギーカレー」(1300円)。山型に盛られたライスに赤いラインが走る独特のビジュアルは、まるで富士山の断層を思わせる。クセを抑えたスパイス感と力強い辛さ、透き通るような旨味は、渋谷らしい都会的な味わい。食べ進めるうちに体の芯から熱が湧き上がり、記憶に残る余韻を残す。
作家・池波正太郎も愛した名店で、エッセイには「むかしと変わらぬ味、いや、むしろ旨くなっていた」と記されている。時代が移ろっても味を守り続ける、その姿勢こそが“渋谷のカレー文化”を象徴している。
おすすめの組み合わせは、東京発のクラフトコーラ「伊良コーラ」。スパイスと柑橘の清涼感がカレーの後味を鮮やかに締めてくれる。
2025年には実に20年ぶりとなる夜営業を再開し、さらに訪れやすくなった。変わりゆく渋谷で、変わらぬ美味しさを届ける一軒だ。
店舗情報
- 店名:ムルギー
- 住所:東京都渋谷区道玄坂2-19-2
- アクセス:JR渋谷駅ハチ公口から徒歩7分
- 営業時間:11:30〜15:00/17:00〜20:00(平日のみ夜営業)
- 定休日:火曜
6位:大久保「ナングロガル」
第6位は「第二のネパール」こと大久保に息づくダルバート。新大久保駅から歩いて数分、雑居ビルの3階に店を構える『ナングロガル』。店名はネパール語で「竹の家」を意味し、店内には竹細工の装飾やネパール語の会話、スパイスの香りが漂う。ここは、ネパールを知る人にとって“もう一つのカトマンドゥ”と呼びたくなる場所だ。
ネパールを旅した人が懐かしさを覚え、ネパールを知らない人がその空気に惹かれる。そんな“旅の記憶”を皿の上に再現してくれるのが、この店の「ダルバート」。ネパールの国民食とも呼ばれる家庭料理で、豆スープ(ダル)、米(バート)、炒め物(タルカリ)、漬物(アツァール)、カレーがひと皿に盛られる。
『ナングロガル』のダルバートは、エヴェレストで食べた味に最も近い本格派。素朴ながら滋味深く、スパイスの使い方に現地の生活感がにじむ。しっかりとスパイスで仕上げられたチキンカレーに、やさしい豆スープが寄り添う。付け合わせの野菜炒めや漬物もすべて手作りで、どのひと口にも家庭の温もりがある。
ネパールを旅した者にも、まだ旅していない者にも。ナングロガルは、新大久保に吹くヒマラヤの風である。
店舗情報
- 店名:ナングロガル
- 住所:東京都新宿区百人町1-17-10 常陽第2ビル 3F
- アクセス:JR新大久保駅から徒歩4分
- 営業時間:11:00~15:00/17:00~22:00
- 定休日:火曜日
7位:青山「天馬」
表参道の赤レンガの壁と黒いテント屋根が目印の欧風カレー専門店『天馬』。カレーパンのテイクアウトで知られるが、店内で味わうカレーこそ真価を発揮する。
看板メニューは「キーマカレー」だが、ビーフやエビなど多彩な欧風カレーも人気。おすすめは「ハーフ&ハーフ」。例えばビーフは酸味と旨味が調和した重厚な味わいで、ほろほろの牛肉が主役級の存在感を放つ。
一方エビカレーは驚くほどマイルド。海老の甘みとまろやかさが優しく広がり、深い余韻を残す。両者が一皿で出会うことで、上品で奥行きのある体験が完成する。白いプレートに細長く成形されたライス、彩りを添えるパセリとフライドオニオン。その端正な盛り付けからも、欧風カレーの品格が伝わってくる。
デザートセットで味わえるマンゴーラッシーやショコラも好評だ。
「天馬」は、ただ食事をするだけの場所ではない。欧風カレーの王道を楽しみながら、訪れた人の時間や記憶に寄り添う。表参道という街にふさわしい、落ち着きと気品を湛えた一軒である。
店舗情報
- 店名:カレー&カレーパン 天馬 青山店
- 住所:東京都渋谷区神宮前5-53-9
- アクセス:表参道駅B2出口から徒歩6分
- 営業時間:11:00〜22:00
- 定休日:なし
8位:大久保「ネパールツロ」
JR大久保駅南口からほど近く、雑居ビルの合間に静かに佇むネパール料理店『ネパールツロ』。ヒマラヤを感じる大久保の隠れ家である。看板を見上げるだけで、山岳ロッジのような温もりを感じる。
店名の“ツロ”はネパール語で「大きい」という意味。東京にいながら、ヒマラヤの懐に包まれたような感覚に浸れる一軒だ。
この店の魅力はなんといっても「カナセット(ダルバート)」に尽きる。銀のプレートに、ライス・豆のスープ(ダル)・チキンカレー・野菜炒め(タルカリ)・青菜・漬物(アチャール)・豆の煎餅(パーパド)などが円形に美しく盛りつけられる。ひと皿で栄養もバランスも満点。混ぜて、重ねて、少しずつ味を調整しながら食べるうちに、身体が芯から温まり、力が満ちてくるのを実感できる。
山を目指す登山者たちの“儀式”として愛されてきた一皿が、今では日常のなかで気軽に味わえる幸せ。ネパールの空気と地力を感じたいなら、『ネパールツロ』でダルバートを味わってほしい。
店舗情報
- 店名:ネパールツロ
- 住所:東京都新宿区百人町1-24-16 カーサ大久保 1F
- アクセス:JR大久保駅南口から徒歩1分
- 営業時間:11:00~15:00/17:00~23:00
- 定休日:無休
9位:鷺ノ宮「カレーや うえの」
西武新宿線・鷺ノ宮駅から徒歩2分。青果店「金次郎」の2階にある『カレーや うえの』は、「Japanese curry」を掲げる一軒だ。店内は15席、現金前払い制。注文から調理、配膳まで店主がひとりで切り盛りするワンオペ営業ながら、その味は驚くほど丁寧で繊細だ。
おすすめは「チキンカツと野菜あぶりチーズカレー」(1200円)。揚げたてサクサクのチキンカツに、とろとろチーズと香ばしく炙られた野菜が豪快にのる。最初は家庭的な日本カレーの優しさが広がり、後からスパイスの刺激が追いかけてくる絶妙な二段構え。カツの香ばしさと肉の旨味が重なり、口の中で拍手が鳴り響くような満足感だ。
味わいはどこか「お母さんのカレー」を思わせながら、プロの技術で研ぎ澄まされている。効率化が重視される時代に逆行するような手間暇を惜しまぬ一皿は、日本の食の温かさを再認識させてくれる。
下町情緒を感じる中野・鷺ノ宮で、心も満たされる“Japanese curry”を体験したい。
店舗情報
- 店名:カレーや うえの
- 住所:東京都中野区鷺宮3-20-9 2F
- アクセス:西武新宿線 鷺ノ宮駅から徒歩2分
- 営業時間:11:30〜15:00/18:00〜21:00
- 定休日:水曜
10位:神保町「ボンディ 神房」
神保町といえば古本とカレー。その象徴的存在『ボンディ』の味を、姉妹店『ボンディ 神房』で楽しめる。場所は神保町駅から徒歩数分、路地裏に佇む隠れ家。立派な盆栽が迎える和の佇まいは、店名「神房」を体現している。欧風カレーは、本店譲りの王道の味。
まずは名物「じゃがバター」から始まる。ボンディはカレーにジャガイモを入れないため、別添えの茹でジャガイモが主役級の存在感を放つ。バターをのせてほおばれば、カレーを食べる前から心を奪われるほどの美味しさだ。
看板のビーフカレーではなく、あえて「チキンカレー」を選ぶのも通の楽しみ方。出汁のように優しく、しかし確かな芯を持つ味わいは、スプーンを止めさせない。過剰さを排したバランスが欧風カレーの真髄であり、ワインとも見事に調和する。
神保町の街に根ざし、欧風カレーの魅力を存分に伝える『ボンディ 神房』。古本街を歩いた後、ジャガイモとともにいただく一皿は、10年経っても変わらない余韻を残す。
店舗情報
- 店名:ボンディ 神房(じんぼう)
- 住所:東京都千代田区神田神保町2-3 神田古書センター2F
- アクセス:地下鉄神保町駅から徒歩3分
- 営業時間:11:00〜15:00(ランチタイムのみカレー提供)/17:00〜22:00
- 定休日:月曜
東京おすすめイタリアン
東京のおすすめラーメン
東京おすすめフレンチ
新宿の最強グルメマップ
食の憶い出を綴ったエッセイを出版しました
『月とクレープ。』に寄せられたコメント
美味しいご飯を食べるとお腹だけではなく心も満たされる。幸せな気持ちで心をいっぱいにしてくれる、そんな作品。
過去を振り返って嬉しかったとき、辛かったときを思い出すと、そこには一生忘れられない「食」の思い出があることがある。著者にとってのそんな瞬間を切り取った本作は、自分の中に眠っていた「食」の記憶も思い出させてくれる。