食いだおれ白書

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カレーハウス11 イマサ〜新宿を彩る朝カレー

カレーハウス11 イマサ

新宿駅西口の京王モール内に位置する「カレーハウス11イマサ」は、1964年に創業した老舗のカレー専門店。それまで大衆娯楽の中心地だった浅草から、東京オリンピックをきっかけに、新宿、渋谷へと若者の首都は移っていく。そんな東京の歴史と共に歩みを進めてきた。f:id:balladlee:20250321082124j:image

店名の「イマサ」は「今佐」と書き、一期一会の「かけがえのない"今"という瞬間」を、「佐」は「それを助ける」という意味が込められている。誰もが焦り、どこかへ急ぐ。ファストフードを最も必要とする街・新宿のカレー文化を語る上で欠かせない店である。

カレーハウス11 イマサ

カレーの種類はビーフ系、チキン系、ポーク系、インド系、キーマ系を基本とし、ロースカツ、チキンカツ、ハムカツ、メンチカツ、ハンバーグ、玉子のコロッケ、トロあじフライなどのトッピングを楽しむ。

カレーハウス11 イマサ

朝7時からオープンしており、ポーク、チキン、ビーフの朝カレーは500円前後。まいにち食べられる価格であり、イチローのような朝カレーライフを愉しめる。夜10時まで営業し、新宿のサラリーマンや観光客をリーズナブルな価格で支えている。

チキンカレー(朝カレー)

カレーハウス11 イマサ

2025年3月21日、金曜。朝7時半。満員電車から会社員が押し出され、暗い表情に沈んでオフィスに向かう。8時に開くコワーキングスペースでは掃除ロボットのルンバが走り回っている。観光客が動き出すには少し早い。京王モールの地下では、少し肌寒い春の朝に、珈琲やカレーなどのモーニングの匂いが漂っている。

カレーハウス11 イマサ

カレーを包む色鮮やかなレトロポップな皿。白地にオレンジ、緑、赤、黄色の模様がちりばめられ、どこか昭和の喫茶店を思わせるような温もりがある。カレーの深いブラウンとのコントラストが、より一層食欲をそそる。

チキンカレーは480円。ルーはとろみを帯び、柔らかく煮込まれたチキンがのぞく。

ポーク、ビーフの中辛と違ってチキンカレーは甘口。パプリカ、トマト、玉ねぎ、チャツネ、牛・豚・鶏エキスの甘さでマイルドに仕上げる。

最初に甘さが飛び込んでくるが、徐々にスパイスがじわじわと顔を出し、奥行きのある味になる。懐かしくもあり、ちょっぴり本格的でもある。カレーの温もりと彩りに包まれる朝、一日を始める潤滑油になってくれる。

ポークカレー(朝カレー)

カレーハウス11 イマサ〜新宿を彩る朝カレー

映画の前後はラーメンに限るが、登山やスポーツ観戦の前はカレーが食べたくなる。

2025年4月8日、火曜日の朝7時半。目指したのは、新宿駅構内にある有名な朝カレーの店。ところがその店はスーツ姿のビジネスマンでぎっしり。静かに食べたい朝にはちょっと騒がしい。

足を向けたのが「カレーハウス11イマサ」。白い看板に「since 1964」の赤い文字が誇らしい。レトロな食品サンプルがずらりと並ぶショーケースが朝の気分を和らげてくれる。

カレーハウス11 イマサ〜新宿を彩る朝カレー,ポークカレー

店に入ると、カウンター席がゆるやかにコの字を描き、店内は落ち着いた黄色の照明。忙しそうなビジネスマンと違い、カレーを黙々と食べるのは、常連のおじいちゃん。

カレーハウス11 イマサ〜新宿を彩る朝カレー,ポークカレー

カラフルな縁取りのプレートに盛られたルーとライスが、朝のぼんやりとした心を一気に現実に引き戻す。

ポークカレー(480円)は一口目、スパイスの香りとともにシナモンの甘みがふわりと広がり、次の瞬間、じわじわとカイエンペッパーの刺激が舌を包み込む。やさしいだけじゃない、目を覚ますための辛さがちゃんとある。豚肉はほろっとほどける柔らかさ。定食屋の角煮のような、ほっとする温もりがある。

カレーハウス11 イマサ〜新宿を彩る朝カレー,ポークカレー

ヒリヒリとスパイスが残る口の中に、追加のラッシー(150円)を流し込むと、一気に世界が変わる。ヨーグルトのような豊潤な甘さが、朝の胃袋をそっとなだめてくれる。次からは最初から頼む。

新宿の喧騒の中で、ほんの少しだけ時間が止まったような、静かで熱い朝ごはん。今日一日、ちゃんと頑張れそうな気がする。朝カレーは、やっぱりここに限る。

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