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食いだおれ白書

世界を食いだおれる

第一旭〜京都と吉岡里帆

第一旭〜京都と吉岡里帆

朝6時オープン。京都の朝ラーは、京都駅前の『第一旭』。開店前、真冬の凍える早朝でも真夏の熱中症案件の炎天下でも行列が絶えない。

第一旭〜京都と吉岡里帆

君は第一旭を知っているか?吉岡里帆が深夜バスで東京を往復していたとき、いつも朝ラーメンしていたお店。物語が詰まった店は特別な味がある。色んな人たちのドラマ、思い出、おすそ分けしてもらう。

第一旭〜京都と吉岡里帆

京都産の醤油、九条ネギ、1947年の創業、戦後間もない頃から京都を支えてきた。懐かしの京都弁「おおきに〜」が彩る。ラーメン940円。

第一旭〜京都と吉岡里帆

新宿にも支店があるが、高倉塩小路の行列と「おおきに」の京都弁が大切な調味料。吉岡里帆と同じように、立命館大学週刊プロレスの記者を目指していた頃を思い出させてくれる、時のふりかけ。

麺響 万蕾/菊川

麺響 万蕾/菊川

日本で指折りの麺ヘラである自分に挑戦状が来た。東京で上位に入るうまいラーメン屋があると。菊川?聞いたことない。墨田区の下町。新宿から都営新宿線で一本。20分くらいかかるが行ってみよう。

麺響 万蕾/菊川

下町の喧騒から外れた住宅と倉庫の狭間。坂本勇人の6番カウンター。

麺響 万蕾/菊川

白醤油ラーメン全部乗せ千二百円。麺が出汁の乗り物となり旨味を運ぶ。イタリアンのコース料理で出せる焼豚、煮卵、焼き海苔。上京して東京のレベルに衝撃が走った頃にタイムリープ。時をかけるラーメン。

ラーメンを食べて感動したのはいつ以来か。

麺響 万蕾/菊川

二日連続で菊川へ。上京した頃のラーメンへの渇望と探究を甦らせる『麺響 万蕾』。前回の初探訪では白醤油の変化球。今度は醤油の直球勝負。味玉1050円。これほど出汁の旨味を0.1gも逃さない麺は初めて。具に至るまで味がすべて強烈なのに圧がない。凛としてストロングスタイル。

麺響 万蕾/菊川

ご馳走様でした。

きくらげたまごの唄〜町中華の宝石たち

大和で生まれ育った者からすれば東京に「町中華」は存在しない。都会に「町」は似合わない。登山で人のいない地方に行き、老夫婦がひっそりと経営する中華屋さんに入る。それこそ「町中華」である。そんな堅苦しいバイアスをほぐしてくれる本がある。

ひらがな。タイトルが平仮名。すべてをフラットにする。「町」であろうが「街」であろうが、どっちでもいい。そんな美味しさに溢れている。こだわりが虚空に消えていく。戸惑いの朝と確信の夜がある。そんな中から七色の名店を紹介する。

秀永(高田馬場

2023年4月4日、アントニオ猪木さんの引退試合の日に木須肉(ムースーロー)を求めて早稲田松竹の向かい『秀永』へ。

開店から30分待ち。常連のおじいちゃんに「凄い行列ですね」と話しかけると「美味いよ。親父さんが1人で鍋を振ってるんだ」と笑顔。こういう店は絶対に美味い。いざ、きくらげたまご。主役に加え、ニンニク、小松菜、ネギも完璧。侍ジャパンの全員野球。鞄を忘れたお客さんが戻ってきた。「うますぎて慌てたよ」に店内大爆笑。

秀永(高田馬場)の情報

餃子荘ムロ(高田馬場

4月20日高田馬場の連投。きくらげたまご求めて高田馬場『餃子荘ムロ』へ。ぷるんぷるんの木耳とパリパリの卵焼きの五目焼きそば、注文してから皮と餡を混ぜる餃子。

壁にある長嶋茂雄さんのサイン。巨人が弱いと景気が悪い!とご主人。店内は大盛況。ニンニク餃子を2つサービスしてくれた。家庭料理より家庭的な手作りの味。

餃子荘ムロ(高田馬場)の情報

岐阜屋(新宿)

4月25日、尾崎豊の命日。巨人の2軍戦を観に川崎のジャイアンツ球場へ向かう。その前の朝ごはんに新宿の岐阜屋へ。今ではプロの料理人もおすすめに挙げる店になり、有名店。

新宿の夜を見守る思い出横丁の『岐阜屋』で「きくらげたまご」と「チャーハン」の朝食。ファストフードのようにサッと出てくるのに味わい深い。これがお店の歴史。岐阜屋は時間を味わう店。

岐阜屋(新宿)の情報

  • 問い合わせ: 03-3342-6858(予約不可)
  • 住所:東京都新宿区西新宿1-2-1
  • 最寄り駅:新宿駅
  • 営業日:不定
  • 営業時間:月・火・水・日(9:00 - 01:00)木・金・土(9:00 - 02:00)
  • 定休日:なし
  • 食べログ岐阜屋 (ギフヤ)

桂林(錦糸町

行列のできるお店は美味しくない。窮屈だからだ。時間や空間によっても味は変わる。時空が最大の調味料なのだ。その考えをほぐしてくれる。どしゃぶりの錦糸町、大行列の『桂林』。名物の海老チャーハンは断腸し、きくらげたまご&桂林ラーメン。ごはんに乗せたくなる濃厚な旨味の餡、木耳、玉子、豚肉の三重奏、DJのさやえんどう。小さな一皿がダンスホールに変わる。ラーメンをスープ代わりにしてしまう、きくらげたまごの宇宙を堪能した。

桂林(錦糸町)の情報

なかじま(渋谷)

5月10日、12時40分、店に立つ。高田馬場にある会社を出て山手線で渋谷駅へ。ドアトゥドアで40分ほど。

本に書いてある雰囲気とは真逆。若いアルバイト3人が威勢のいい声で出迎える。渋谷の喧騒そのもの。カウンターにご主人らしきひとはいない。全部で6人。他のスタッフに任せているようだ。お店の顔はひとつではない。来るタイミングによって色んな表情に変わる。

食券機で買う町中華なんてない。やはり街中華。五目炒飯を付き人に。すぐにテーブル席に座れたが、後ろには行列。外で待たさせる。天井が高い。二階建ての店だろう。これだけ流行っていたら増築するかもしれない。渋谷の喧騒を凝縮した若い活気。オイスターの餡、木耳、溶けそうな玉子、シャキシャキのニラと玉ねぎが四角いジャングルでロイヤルランブル。崇高な聖戦。付き人の五目炒飯に乗せると食べ慣れた味が宮廷料理に。「ラストエンペラーの炒飯」と名付けたい。

なかじま(渋谷)の情報

  • 問い合わせ:03-5774-1601(予約不可)
  • 住所:東京都渋谷区渋谷3-18-7 ナルセビル 1F
  • 最寄り駅:渋谷駅
  • 営業日:不定
  • 営業時間:平日(11:00 - 0:00)、土日(11:00 - 21:30)
  • 定休日:なし
  • 食べログ麺飯食堂 なかじま - 渋谷

おけ以(飯田橋

飯田橋にある餃子の店『おけ以』。ミシュランの本に紹介されてから東京で屈指の行列店になった。

一度、日曜の昼に訪ねたが、昼は「きくらげたまご」をやっていない。

代わりにラーメンと餃子を頼んだが、あまりの美味しさに驚愕した。

再び夜にリベンジ。チャーハンと、きくらげたまご。ルパンと次元。

汁気のない素朴な町中華。ラーメンと餃子の衝撃には及ばないが美味い。お店で『きくらげたまご』の本を読んでいると「その本を見て来てくれたんですね」と笑顔。

おけ以(飯田橋)の情報

生駒菜館(菊川)

東京の墨田区に菊川という下町がある。映画『めためた』が撮影された近く。strangerという、その名の通り変わった映画館がある。

映画ファンより映画関係者の中にファンが多い。俳優ARATA井浦新)さんもその一人。舞台挨拶を見て一緒に写真を撮ってもらったあと、きくらげたまごを求めた。

生駒菜館(菊川)

菊川駅、映画館のすぐ近くに生駒菜館はある。

生駒菜館(菊川)

チャーハンにたっぷりのキノコがうれしい。

生駒菜館(菊川)

きくらげたまご700円。湯気がもんもんと狼煙のように蜃気楼のよう。フーフーかめはめ波しても一向に冷めない。猫舌禁制、火力と共犯関係。お皿の海で泳ぐ豚肉と玉ねぎの旋律が優雅。

兆徳(本駒込

5月11日、有給をとって上野にマティス展を観に行く。その前の腹ごしらえに、きくらげたまご。駒込駅から都道445号線を猪突猛進。地図アプリでは30分とある。半分くらいで行けるだろう。3回も信号に捕まったが12時20分到着。横断歩道の向こうに行列ができている。雲のむこう、約束の場所「兆徳」があった。ミサに並ぶ行列は20人ほど。

40分待って入店。玉子チャーハン、1600円。グルメでも美食家でもない。食いしん坊。

店内は360度どこを切り取っても町中華。懐かしい麦茶。田舎の味だ。

40分並んだ本駒込の『兆徳』。リコピン大魔王にとって、これ以上の「きくらげたまご」は存在しない『家族ゲーム』の脚本を読んだ松田優作は「足が5センチ浮いた」と絶賛したが、この玉子とトマトの浮遊力も驚異。一皿の雲海、東京の空中庭園、兆徳。並んででもまた来たい。雲のむこう、約束の場所

兆徳(本駒込)の情報

  • 問い合わせ:03-5684-5650(6名から予約OK)
  • 住所:東京都文京区向丘1-10-5
  • 最寄り駅:本駒込駅
  • 営業日:火曜から日曜
  • 営業時間:火・水・木・金(11:30 - 14:30、17:30 - 23:00)、土・日・祝日(11:30 - 14:30、17:30 - 22:00)
  • 定休日:月曜日
  • 食べログ中華 兆徳 - 本駒込

奈良県桜井市グルメ〜大和お国自慢

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「奈良に美味いものなし」は世界七不思議のひとつ。三輪山そのものが御神体である故郷の桜井には美味しいものしかない。三輪そうめんが代表格。歴史が好きな者で桜井は避けて通れない。

ヤマトタケル額田女王

奈良県桜井市、ヤマトタケル

ヤマトタケルが詠んだ歌碑

桜井市出身の英雄・ヤマトタケルが詠んだ歌碑。

大和は 国のまほろば たたなづく青垣 山ごもれる 大和し 美し

まほろば」は最も素晴らしいという意味。歌の「山」は、三輪山大和三山耳成山畝傍山・天香山)を指す。

奈良県桜井市、額田女王

額田女王が詠んだ歌碑

もうひとりが万葉の歌人額田女王(ぬかたのおおきみ)

三輪山を しかも隠すか 雲だにも こころあらなむ 隠さふべしや

近江に都を遷し移動をするとき、「愛しい三輪山を雲に隠さないでほしい」と悲しんだ歌である。三輪山はいくつもある《名山》とは違い、唯一無二の《神の山》である。

焼肉こよい

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

「焼肉こよい」は奈良県桜井市国道169号線にある焼肉屋さん。1967年の創業。物心ついた頃から30年以上通っている。大学生になるまで野菜も魚も食べられない肉食獣だったのは「焼肉こよい」の影響かもしれない。ブラインド焼肉をしても、焼肉こよいの肉を当てられる。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

暖簾の前に来たときから焼肉は始まっている。お店の外に香ばしい肉の匂いが漂う。ブラックホールのように肉の迷宮にいざなわれる。カウンターと椅子もあるが30年間座敷。ゴロゴロと寝転べるし、小さな姪や甥と走り回って遊べる。壁には相撲力士のサインと大和三山の絵画。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

50年以上、焼肉の煙に炙られた頂点。今も女将さんの旦那さんが創業。2014年、僕が大学生のときに亡くなられた。今は女将さんと娘さんの二人で切り盛りされている。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

はじまりはいつも塩タン。レモンだけかけて食べる。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

いつも肉は盛り合わせ、お任せコース。好き嫌いないから、その日の美味しい部位を切り分けてくれる。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

昔はロースとカルビしか食べられなかったが、今の一番のお気に入りはミノ。焼肉の部位ではハラミと並んで好きだ。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

必ず注文する卵スープ。桜井のオアシス。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

肉の油が口に回ってきたら日本一美味しいキムチの登場。大げさではなく本当に日本一美味しい。いつも大阪の鶴橋から仕入れてる。ここより美味しいキムチがあればコメントで教えて欲しい。帰省するたび、ここに帰ってくる。通う焼肉ではなく焼肉屋に帰る。

活魚・ちゃんこ 一語一笑

一語一笑/奈良 桜井

冬になると必ず行きたい、必ず食べたい塩ちゃんこがある。控えめに言って日本一。ちゃんこ•オブ•日本。桜井駅から584m。

活魚・ちゃんこ 一語一笑 - 桜井市

活魚・ちゃんこ 一語一笑。「いちごいちえ」と読む。ステキな名前だ。店内に入ると生け簀があり、イキのいい魚が遊泳している。

活魚・ちゃんこ 一語一笑 - 桜井市

邪馬台国があった奈良県桜井市。山がない大和の国に不釣り合いな活魚料理店。長年、敬遠してしまっていた。もっと早く行っておけばと悔やんだものである。

【一語一笑/奈良 桜井】

豪快な塩ちゃんこ鍋のほかに、繊細なふろふき大根も美味。

活魚・ちゃんこ 一語一笑 / 桜井市

小さな子ども連れでも喜ぶメニューがいっぱい。太陽がいっぱい。4歳の甥も7歳の姪も大喜び。マカロニグラタン750円。

活魚・ちゃんこ 一語一笑 / 桜井市

名付けて日本一の塩ちゃんこ。一人前2500円。函館・三重・岡山•舞鶴など全国の食材を集めた鍋。バランス、出汁の旨み、奈良でこんなに美味しいちゃんこが味わえるとは目から鱗が467個くらい落ちる。贔屓ぬきで、ちゃんこ•オブ•日本。

活魚・ちゃんこ 一語一笑 / 桜井市

締めの雑炊400円まで完璧なリレー。パーフェクト・ゲーム達成の鍋料理。冬の訪れを待ち侘びて、今年も故郷へ帰る。

割烹・仕出し 桝谷

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

奈良県桜井市の冠婚葬祭は桝谷(ますたに)。ご主人は大の話好きで一度口が開くと止まらない。桜井市出身の芸人・笑い飯 哲夫と幼馴染で常連。結婚披露宴も桝谷で挙げた。大型バスもご主人自ら運転し送迎。法事のときにお世話になる。割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

広くて小さな子供や赤ちゃんがいても安心。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

会席料理(基本コース)5,000円。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

大勢の親戚が集まるとき、美味しい食を用意してくれる。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

お肉もたっぷりで、お腹も満杯。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

豪快から繊細まで。季節の変わり目を料理がおしえてくれる。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

商品名は商標登録中だが、桜井市天皇の名前の和菓子を創作。こし餡とサクサクの春巻き。熱々で優美な風味と食感。本物の三輪そうめんが消えていく中、新しい故郷の自慢。『割烹 桝谷』で召し上がれ。

味の風にしむら

奈良県桜井市のヘッドライナーが「味の風にしむら」。2012年、ミシュランガイド奈良に一つ星レストランとして紹介された。「奈良にうまいもん無し」と揶揄されるが、にしむらの料理を味わえば、そんなことは言えなくなる。

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一方通行の多い路地裏で道に迷う。看板もなく、なんの目印もない白壁のアパートの一角のような場所に佇む。これでは迷うのも無理はない。

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若い料理人の方が鰹節を削っていた。にしむらの日常の光景だ。「味の風にしむら」はカウンター10席だけの日本料理。昼夜10名ずつ、1日20人限定で和食をふる舞う。桜井で生まれ育った西村宜久さんが志すコース料理7品。ランチは5,500円。東京だと倍以上の値段がする。一品に使う食材はふたつ程度。ひとによっては簡素が物足らないかもしれない。お品書きもメニュー表もない。これが、にしむら。

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一品目は蕎麦がき。蕎麦掻きとは、蕎麦粉を熱湯でこねて餅状にした食べ物。上には鮫皮のおろしですっていた生わさびが添えられる。ご主人の西村さんの実家はお鮨屋さん。そこでは粉ワサビを使用していたらしく、初めて生のわさびを食べたときは感動したという。強い旨味はないが、にしむらの温かさと姿勢を感じられる。これが本当の強さかもしれない。蕎麦つゆが何ともいえないやさしさをじっくりと醸し出す。第一幕から気分上々。

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二品目は鱈の白子を焼いたお吸物。母親は初めて白子を食べるようで、これが一番気に入っていた。プリプリの食感と香ばしい焼きが絶妙の緩急。お椀の中でやさしさが漂流する。

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三品目は炙った鰆(さわら)と山芋を柿ポン酢に和える。先月に残った柿を熟成させておき、ポン酢に。食品ロスと言ってしまっては軽い。食への志が垣間見える。大和の国で育ちながら、あまり柿を食べない自分だから余計に柿を使った郷土食が出てくれたのがうれしかった。大和の国のカラーは柿の色。

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四品目は太刀魚の塩焼き。山に囲まれた大和人は海への憧れが強い。にしむらでは肉を出さず、海の幸や身近な野菜を提供するようだ。太刀魚の塩焼きだけでもあっさりした滋味を楽しめるが、炙った胡麻の香ばしさが援軍に加わる。大和の「風」を届けるにしむらには、香りが大切な調味料。最初に出されたおしぼりにも、ほのかな芳香だった。

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次の料理に信楽焼きの土鍋窯が登場。漆黒の光沢が美しい。調理も味である。東京のミシュランの店は料理人同士の会話がカウンターで挟まるが、にしむらは無音。お客様との会話だけ。

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五品目は一汁三菜。にしむらの魂、ちりめん山椒ご飯、香の物、味噌汁。ご飯はおかわり可能。お米は瑞々しく、適度な水分がある。お粥ほどではないが、炊き立ての食感。香の物は白菜と大根。浅漬けなのか、こんなやさしい漬けかたがあるのかと思うほど酸味が強調しない。漬物はこうであってほしい。いちばん気に入ったのが蟹の出汁のお味噌汁。澄んだ味噌のあとに蟹の旨味がフワッと薫る。まさに味の風。にしむらの料理は新海誠の作品に似ている。いつも見ている風景を見たことがない風景に変えるように、いつも食べている料理を一度も食べたことのない特別な味に変えてくれる。旨味を主張しない。

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六品目は柚子の葛餅。プリプリ熱々。だが、火傷しない。葛を焼くのは初めて見た。香ばしさが冬の寒さをあったかさに変える。料理は食べると一瞬で消える。だが美しい料理は永遠であり、魂の源泉でもある。

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七品目は煎茶。おちょこが可愛い。食材は引き算しながら、ひと手間を足し算。美味しさを主張せず、食材の奥から美味しさが引き立つのをじっと見守る。味の風にしむら。

【閉業】カフェ・ド・カレー スパイシー

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残念ながら閉業してしまったが、母親のカレーを食べると思い出すのが地元・桜井市にあったカレー屋さん「スパイシー」。元フレンチのシェフだったオーナーが独立され、ご夫婦で営んでいた。十数種類のスパイスを独自にブレンドし、田舎町に似合わない高級感のあるカレー。そこがよかった。1,000円前後の価格も奈良の片田舎では珍しく、休日のご褒美でいてくれた。

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場所は桜井商業という巨人にいた駒田徳広の母校のすぐ近く。車がないと行きにくい場所で、ご夫婦の静かな人柄といい、隠れ家というありきたりな形容が似合うお店だった。

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父はいつもカツカレー、母親はシーフードカレー。僕や弟はチキンカレーや野菜カレーなど色んな種類をサーカスする。

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当時、辛いものが苦手だった僕にとって「普通」より甘口の「マイルド味」があるのが助かった。今思えば、お店の名前と同じスパイシーなカレーも食べておけばよかった。2012年1月に閉店。ふるさとの誇りとして自慢できた数少ないお店だった。もう10年以上が経つ。時の流れは早いのか遅いのか。

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周りは高校だったので、学生には手が出なかったのだろう。料理の腕と商売の腕は一致しない。そんな世の中だからこそ、スパイシーのようなカレー屋さんがなくなったのが寂しい。今ごろシェフご夫婦はなにをしているのだろうか。カレーでなくてもなにか料理を作っていてくれたらと願う。

あるでん亭〜新宿の行列パスタ屋さん

あるでん亭(新宿壱番街)

仕事場のコワーキングスペースの真上。いつも行列が絶えない。1977年銀座で創業。現在は新宿に2店舗ある。パスタは8分茹でが基本。厨房では鉄フライパンと炎が勇ましく舞っている。皿はオリーブ色。

アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノアーリオ,あるでん亭(新宿壱番街)

「アリオ・オリオ・ペペロンチーノ」980円。注文したら「アリオリ」と店員さんは呼んでいた。キレは塩味。食感ツルツル。アーリオ、オーリーオ、ペペロンチーノは三方よし。キレというよりテーマは「調和」。食後もニンニク、オリーブオイル、唐辛子がバランスよく口に残る。油は多めのオイリー。でも、そこまで気にならない。やさしいペペロンチーノ。白ワインが欲しくなる。

アリオ オリオ ベーコン添え

あるでん亭のアリオ オリオ ベーコン添え

あるでん亭の看板メニュー。『アリオ オリオ ベーコン添え』。注文すると「パンチェッタ ノルマーレ!」と厨房にオーダー。1,530円。普通のペペロンチーノが980円なのでベーコンだけで500円近くする。そもそもペペロンチーノが結構オイリーなので、ベーコンの脂も混ざって、かなりツユダク。ギットギトのオイルまみれが好きな人におすすめ。

ボスカイオーラ(北イタリア風)

北イタリアのボスカイオーラ

北イタリアのボスカイオーラ

ボスカイオーラは北イタリアではクリームソースで作られ、南イタリアではトマトソースで作られることが多い。『あるでん亭』では、南イタリアのトマトソースを「ファンタジア」の名前で出している。北斗神拳(北イタリア)と南斗聖拳南イタリア)のふたつも食べ比べてほしい。

ボスカイオーラ(南イタリア風)

あるでん亭のボスカイオーラ(南イタリア風)

あるでん亭のボスカイオーラ(南イタリア風)

ゴッドファーザー

あるでん亭〜ゴッドファーザー

ウニとアーモンドのシチリア風パスタ。1930円。映画に関係なくコッポラ社のソースも使っていない。シチリア風ウニとアーモンドのパスタ。店内に流れていたOasisの『Don't Look Back in Anger』がピッタリ。ウニがノエル、アーモンドがリアム。

カニエラ

あるでん亭のブカニエラ

「ブカニエラ(Bucaniera)」の意味は「海賊風」。最後に魚のアラ出汁(スープ・ド・ポワソン)を加える。家庭ではなかなか作れず、飲食店でも見かけることは少ない貴重なパスタ。

あるでん亭の情報

所在地
〒163-0601 東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービル MB1F
営業時間
月・火・水・木・金・土
11:00 - 21:30 L.O. 21:00

日・祝日
11:30 - 20:00 L.O. 19:30
電話:03-3361-3002

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

「焼肉こよい」は奈良県桜井市国道169号線にある焼肉屋さん。1967年の創業。物心ついた頃から30年以上通っている。大学生になるまで野菜も魚も食べられない肉食獣だったのは「焼肉こよい」の影響かもしれない。ブラインド焼肉をしても、焼肉こよいの肉を当てられる。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

暖簾の前に来たときから焼肉は始まっている。お店の外に香ばしい肉の匂いが漂う。ブラックホールのように肉の迷宮にいざなわれる。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

カウンターと椅子もあるが30年間座敷。ゴロゴロと寝転べるし、小さな姪や甥と走り回って遊べる。壁には相撲力士のサインと大和三山の絵画。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

50年以上、焼肉の煙に炙られた頂点。今も女将さんの旦那さんが創業。2014年、僕が大学生のときに亡くなられた。今は女将さんと娘さんの二人で切り盛りされている。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

まずはキャベツと自慢のタレが食前酒。コロナの緊急事態宣言中でも営業し、「いつでも帰ってきてください」と快く歓迎してくれた。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

はじまりはいつも塩タン。レモンだけかけて食べる。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

肉旅のお供はコカ・コーラ奈良県桜井市は車じゃないと移動できない。近くに桜井警察署があるが、仕事終わりの警察官がよく車できてフツーにビールを飲んでいたことがある。昭和、平成の遺産だ。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

いつも肉は盛り合わせ、お任せコース。好き嫌いないから、その日の美味しい部位を切り分けてくれる。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

昔はロースとカルビしか食べられなかったが、今の一番のお気に入りはミノ。焼肉の部位ではハラミと並んで好きだ。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

必ず注文する卵スープ。桜井のオアシス。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

ロースは30年間お世話になっている。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

肉の油が口に回ってきたら日本一美味しいキムチの登場。大げさではなく本当に日本一美味しい。いつも大阪の鶴橋から仕入れてる。ここより美味しいキムチがあればコメントで教えて欲しい。帰省するたび、ここに帰ってくる。通う焼肉ではなく焼肉屋に帰る。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

奈良県桜井市の冠婚葬祭は桝谷(ますたに)。ご主人は大の話好きで一度口が開くと止まらない。桜井市出身の芸人・笑い飯 哲夫と幼馴染で常連。結婚披露宴も桝谷で挙げた。大型バスもご主人自ら運転し送迎。法事のときにお世話になる。カウンターで頂く「味の風にしむら」とは真逆。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

広くて小さな子供や赤ちゃんがいても安心。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

会席料理(基本コース)5,000円。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

大勢の親戚が集まるとき、美味しい食を用意してくれる。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

お肉もたっぷりで、お腹も満杯。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

豪快から繊細まで。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

季節の変わり目を料理がおしえてくれる。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

商品名は商標登録中だが、桜井市天皇の名前の和菓子を創作。こし餡とサクサクの春巻き。熱々で優美な風味と食感。本物の三輪そうめんが消えていく中、新しい故郷の自慢。『割烹 桝谷』で召し上がれ。