
らーめん おちゃらん屋は、ヨドバシカメラ梅田店のレストランフロアに構える、明るさと温もりを兼ね備えた一軒だ。弟とビジネスセミナーを開催する前、腹ごしらえをしようと立ち寄った。名前の由来も歴史も何もかも謎に包まれている。
ヨドバシの飲食フロアはどの店も賑やかだが、おちゃらん屋は暖簾の奥に広がる柔らかな照明と木目調の空間が印象的で、歩き疲れた身体をふっと沈めてくれるような安心感がある。気取らない雰囲気の中にも丁寧さが見える。

店内に入ると、天井から下がる個性的な照明が目に入る。和紙を使ったような優しい灯りで、ラーメン店らしからぬ落ち着きがある。厨房はオープンになっていて、スタッフの動きが見えるのも良い。湯気と香りが漂い、「今からしっかり美味しいものを食べるんだ」という気分が自然と高まる。

青龍ラーメンを注文した。メニューを眺めていると、モンゴル醤油という聞き慣れない言葉が目に入り、それだけで興味をそそられた。モンゴルとラーメンがどう結びつくのか、まったく想像がつかなかったが、いざ食べてみるとその答えは意外だった。
もっと豪快で荒々しい味を想像していたが、実際は驚くほどあっさりとした醤油味で、クセが少なく、すっと喉を通っていく。朝青龍の吊り落としのような力強さを期待していたが、むしろ草原を駆け抜ける風のようにじんわりと旨味が広がる。飲み込んだあとに少し残るコクが独特で、他では味わえない方向性の醤油ラーメンだと感じた。
具材も相性が良い。煮卵は黄身がとろりとしてスープの旨味を引き立て、ほうれん草はさっぱりとした青さがアクセントになる。メンマは柔らかく、チャーシューはしっとりとしていて、全体が一つのスープに溶け込んでいる。ラーメンはスープが主役と言われるが、この一杯は具材が互いの旨味を支え合い、バランスの良い一皿に仕上がっていた。

セットで頼んだ唐揚げは、外側がパリパリで香ばしく、肉のジューシーさも十分に残っている。衣が厚すぎず、口に入れた瞬間に軽く砕ける感覚が心地よい。焼き飯はしつこさがなく、玉ねぎのシャキシャキした食感が印象に残る。油でべたついた炒飯ではなく、あっさりとしているのにしっかり美味しい「丁寧な焼き飯」だ。

同行した弟は「お紫ラーメン」を注文。こちらは青龍とは正反対で、個性の強い一杯だ。豚骨の香りが立ち上がり、博多ラーメンのような雰囲気がある。濃厚でパンチがあるが、くどさはなく、後半まで美味しく食べられるタイプだ。

セットで頼んだ天津飯は、あんが非常になめらかで、口の中に重たさが残らない。出汁が優しく、清流のようにさらりと流れていく。見た目はしっかりしているのに、食べると驚くほど軽い。

おちゃらん屋はメニューが豊富で、どれを選んでも外れがなさそうだ。ラーメンの種類が多いだけでなく、チャーハン、唐揚げ、天津飯といった中華の定番まで揃っている。家族連れでも一人客でも使える店で、梅田の喧騒の中でさっと食べたい時にも、しっかり落ち着いて食べたい時にも対応できる懐の深さがある。
食べ終わって席を立つ頃には、セミナー前の緊張もどこかへ消えていた。おちゃらん屋は「ただの便利なラーメン店」に収まらず、「また寄りたい」と思わせてくれる力を持っている。梅田に来たとき、ふと体がこの店を思い出すような、そんな確かな存在感のある店だ。
食の憶い出を綴ったエッセイを出版しました!

『月とクレープ。』に寄せられたコメント
美味しいご飯を食べるとお腹だけではなく心も満たされる。幸せな気持ちで心をいっぱいにしてくれる、そんな作品。
過去を振り返って嬉しかったとき、辛かったときを思い出すと、そこには一生忘れられない「食」の思い出があることがある。著者にとってのそんな瞬間を切り取った本作は、自分の中に眠っていた「食」の記憶も思い出させてくれる。





















































