
新宿でイタリアンを探せば、華やかなレストランから路地裏のカジュアル店まで、まるで星の数ほどの選択肢が広がっている。だが、本当に心に残る一皿に出会うには、味だけでなく、空間や物語、その店だけが持つ個性が必要だ。ここでは、新宿に12年暮らし、日々食べ歩いてきた中で厳選した4軒を紹介する。コースでじっくり楽しむ本格派から、気軽に立ち寄れる一皿まで、お気に入りの「グルメ・パラディーゾ(美食の楽園)」がきっと見つかるはずだ。
ヴィンチェロ(新宿御苑)

静寂に包まれた住宅街で味わう、本物志向のイタリアン
新宿の美食家が秘密にしたがる、知る人ぞ知る名店がある。
新宿御苑駅から徒歩約10分、東京医大通り沿いの静かな住宅街に佇む「ヴィンチェロ」は、2002年創業の老舗イタリアン。

大通りの喧騒から離れた場所にありながら、美食家や業界関係者の間で長く愛される“知る人ぞ知る名店”だ。店名の「ヴィンチェロ」はイタリア語で「私は勝つ」という意味を持ち、料理への自信と誇りを感じさせる。

提供されるのは、ワインとのペアリングを重視したコース料理。一皿ごとに素材と技が響き合い、緻密に設計された構成が最初から最後まで途切れない高揚感を与えてくれる。

前菜の「ガスパチョ」は、口に含んだ瞬間に広がる爽やかさと柔らかな酸味で、食欲を自然に呼び覚ます。スペシャリテの「鱧とトウモロコシのムース」は、淡白な鱧に芳醇なとうもろこしの甘みを重ね、季節感と食感の妙を堪能できる逸品だ。

さらに印象的なのが「鹿のタルタルと黒トリュフ」。贅沢な香りと口溶けの良い肉質が一体となり、ワインとの相性も抜群。

パスタはオレキエッテを使用し、唐辛子の辛みを穏やかに効かせることで、素材本来の旨味を際立たせている。メインのタリアータは、柔らかくジューシーで、肉の旨味が噛むほどにあふれ出す。一皿ごとに物語があるように、どの料理も記憶に残る存在感を放つ。デザートのパンナコッタは、甘さを控えつつも長く残る余韻が心地よい。

ペアリングは白ワインを中心に構成され、軽快でありながら料理の個性をしっかりと支える。シェフは寡黙に厨房に立ち、料理そのもので語る職人タイプ。余計な演出を排し、味と香りだけで満足させるスタイルは、本物志向の食通を惹きつけてやまない。

「ヴィンチェロ」が新宿で最もおすすめといえる理由は、素材の選択、調理の精度、ワインとの一体感、そして空間の落ち着きが高次元で融合しているからだ。

華やかな新宿の中で、喧騒から一歩離れ、五感すべてで料理を味わえるこの店は、大切な食事の時間を間違いなく特別なものにしてくれる。
ヴィンチェロの店舗情報
- 店名:ヴィンチェロ(Vincero)
- 住所:東京都新宿区新宿5-1-13 MOAビル 1F
- アクセス:東京メトロ丸ノ内線 新宿御苑前駅 徒歩12分/各線 新宿三丁目駅 徒歩12分
- 営業時間:18:00〜23:00(時間外応相談)
- 定休日:不定休
- 電話番号:03-5367-1967
BELLA NOTTE【ベラ・ノッテ】(大久保)

ROLANDが守った“大久保の美しい夜”と太麺パスタの温もり
ROLANDがオーナーを務めるイタリアン「BELLA NOTTE(ベラ・ノッテ)」は、大久保駅近くの落ち着いた路地に佇む一軒。
かつては「パンコントマテ 大久保店」として地元に愛されたカジュアル・イタリアンだったが、コロナ禍で閉店の危機を迎えた際、ROLANDがその味と空間を守るために引き継ぎ、新たな店名を与えた。

ディズニー映画『わんわん物語』の主題歌から名付けられた「美しい夜」という意味のベラ・ノッテ。店内にはディズニー映画の音楽が静かに流れ、木目と白を基調としたインテリアが温もりと落ち着きを演出している。

料理の最大の特徴は、日本では珍しい2.5mmのスパゲットーニ。もっちりとした食感と小麦の香りが際立ち、濃厚なソースにも負けない存在感を放つ。看板パスタのウニクリームは、磯の香りとまろやかさが絶妙に溶け合い、一口ごとに贅沢さが広がる。

トマトソース系では、映画『カリオストロの城』を思わせるミートボールパスタが名物。トマトの酸味と甘みが肉の旨味を包み込み、どこか懐かしい余韻を残す。ピッツァはカプリチョーザが評判で、しめじやベーコンなど素朴な具材を、香ばしい生地と濃厚なトマトソースが一体化させる。

前菜の一押しは「飯蛸のトマト煮込み」。小さな蛸の足がくるりと巻かれ、鮮やかなトマトソースに浸って皿の上に小さな宇宙を描く。蛸は柔らかく煮込まれ、トマトの酸味と甘みがじんわりと染み込み、白ワインやビールとも相性抜群だ。

肉料理では「牛フォレ肉のロッシーニ」が真骨頂。柔らかく焼き上げたフィレ肉に、フォアグラの芳醇な脂と香り高いトリュフソースが重なり合う。華美に走らず、それでいて揺るぎない存在感を放つ一皿だ。

ランチは前菜4種、パスタ、肉料理、デザート、ドリンク付きのコース(2680円)があり、豊かな味を一度に堪能できる。デザートにはぜひティラミスを。エスプレッソのほろ苦さとマスカルポーネの優しい甘みが層を成し、口の中でふわりと溶けていく。
新宿からほんの少し足を伸ばすだけで、家庭的で温もりのあるイタリア料理と、穏やかな時間が流れる空間に出会える。ベラ・ノッテは、まさに名前の通り“美しい夜”を届けてくれる特別な一軒だ。
ベラノッテの店舗情報
- 店名:BELLANOTTE(ベラノッテ)
- 住所:東京都新宿区百人町1-23-22 寿宝ビル1F
- アクセス:JR「新大久保駅」から徒歩4分/「大久保駅」から徒歩3分
- 営業時間:Lunch:11:00~16:00(L.O. 15:30)、Dinner:18:00~23:00(L.O.22:30)
- 定休日:月曜日・第3日曜日
- 席数:18席(カウンター・テーブルあり)
てっぱんのスパゲッティ(西新宿)

鉄板の魔法で味わう、新宿駅近のカジュアル・イタリアン
新宿センタービルの地下にある「てっぱんのスパゲッティ」は、名の通りパスタが主役のように見えるが、その実態は酒とともに楽しめるカジュアル・イタリアンだ。

生麺専門店「鎌倉パスタ」が手がけるブランドで、20種類以上の豊富なパスタはもちろん、パンやサイドメニュー、甘味までそろい、食事から軽い一杯まで幅広く使える懐の深さを持っている。

鉄板で仕上げられるパスタは、もっちりとした生麺に香ばしさがしっかり染み込み、焼きそばのような親しみやすさとイタリアンらしい風味が同居する独自のスタイル。「醤油バジル」は和と洋が融合し、海老やマッシュルームが彩りを添える。

「ペペロン」はガーリック、塩、唐辛子が三位一体となり、鉄板の熱で香りと勢いを放つ。厚切りベーコンを大胆に使った「一枚ベーコンのカルボ」は、胡椒の効いた力強い味わいで、噛むほどに肉の旨味が広がる。

「たらジェーノ」は、たらことジェノベーゼを融合させた、屋台料理を思わせる遊び心のある一皿だ。

パスタだけで終わらせないのが、この店の魅力。カリッと焼いたバゲットにバターとはちみつをたっぷり染み込ませた「ハニーバタートースト」は、食後の余韻を支配してしまうほどの存在感で、時にパスタ以上の満足感を与える。

シーザーサラダやスープなどのサイドメニューも充実しており、ワインやビールと合わせれば、しっかり“イタリアンの晩餐”として成立する。
新宿の喧騒を少し離れた地下空間で、鉄板の上で立ち昇る湯気と香ばしい音に包まれながら、熱々の料理と一杯の酒を味わう時間。「てっぱんのスパゲッティ」は、パスタ好きだけでなく、気軽にイタリアンを楽しみたいすべての人におすすめできる一軒だ。
てっぱんのスパゲッティの店舗情報
- 店名:てっぱんのスパゲッティ 新宿センタービル店
- 住所:東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービル MB1F
- 営業時間:11:00~21:00(L.O. 20:30)
- 定休日:年中無休(施設に準ずる)
あるでん亭(西新宿)

新宿で愛され続ける老舗トラットリア
新宿の「あるでん亭」は、1977年に銀座で創業した老舗イタリアンの新宿店。現在は新宿に2店舗を構え、どちらも常に行列が絶えない人気ぶり。店内は約30席とこじんまりとしたトラットリア風で、家庭的な温かみと落ち着いた雰囲気が漂う。厨房では鉄フライパンと炎が踊り、オリーブ色の皿に盛られる料理はどれも丁寧な仕事ぶり。

メニューはパスタの種類が豊富で、トマト、和風、クリーム、塩系といった定番に加え、季節限定の豪華な一皿も揃う。特に「アリオ・オリオ・ペペロンチーノ」は、塩味・ニンニク・唐辛子・オリーブオイルが絶妙に調和し、オイリーながらも優しい口当たりが魅力。さらに看板メニューの「アリオ オリオ ベーコン添え」は、香ばしいパンチェッタが加わり、オイルの旨味と肉のコクが一体となったリッチな味わいの仕上り。

パスタだけでなく、イタリアらしい前菜やサイドメニューも充実。「あさりのワイン蒸し」や「厚切りベーコンのソテー」、「フレッシュトマトのサラダ」など、複数人でシェアして楽しめる品が多く、ブルスケッタが280円で楽しめるのも嬉しいポイント。ワインはグラス500円から、ボトルはイタリア産の「パラディン」が中心で、価格も良心的。

北イタリアのボスカイオーラ
北イタリアの「ボスカイオーラ」、魚介の旨味を凝縮した「ブカニエラ(海賊風)」や、シチリアの風を感じさせる「ウニとアーモンドのパスタ」など、個性的で記憶に残る料理も多く揃う。

新宿でイタリアンを楽しむなら、あるでん亭は外せない一軒。クラシックな味わいから独創的な一皿まで、長年培われた技と遊び心が詰まった料理を、ワインとともにゆっくり堪能できる。
あるでん亭の店舗情報
- 店名:あるでん亭 新宿センタービル店
- 住所:東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービル MB1F
- 営業時間:月〜土 11:00〜21:30(L.O.21:00)/日・祝 11:30〜20:00(L.O.19:30)
- 定休日:無休
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食の憶い出を綴ったエッセイを出版しました

『月とクレープ。』に寄せられたコメント
美味しいご飯を食べるとお腹だけではなく心も満たされる。幸せな気持ちで心をいっぱいにしてくれる、そんな作品。
過去を振り返って嬉しかったとき、辛かったときを思い出すと、そこには一生忘れられない「食」の思い出があることがある。著者にとってのそんな瞬間を切り取った本作は、自分の中に眠っていた「食」の記憶も思い出させてくれる。