食いだおれ白書

世界を食いだおれる。世界のグルメを紹介します。孤高のグルメです。

『月とクレープ。』案内帖、100円で旅する、記憶の食卓

月とクレープ。Amazon  Kindle

『月とクレープ。』は、2024年6月9日に発売された全28ページの短編エッセイ集です。価格は100円。著者・YAMATOが綴る、食にまつわる憶い出6篇が収録されています。

Amazon Kindle電子書籍限定の刊行で、紙の書籍はありません。本作に登場する登山家の誕生日に合わせ、発売日を6月9日にしました。

タイトル『月とクレープ。』の意味

『月とクレープ。』のタイトル、エヴェレストの月

『月とクレープ。』のタイトルは、2016年のエヴェレストで最も印象的だったのが「月」だったこと、登山家のいちばん好きな食べ物が「クレープ」だったことから付けました。最後の「。」は、「満月」をイメージしています。

当初のタイトル案は「食べログにない人生最高レストラン」。ほかにも「素数メシ」という候補がありました。これは著者自身が「素数のような変わり者」として「素数人間」と呼ばれていたことに由来します。

表示デザイン

表紙のデザインは、女性イラストレーターによる手描きです。

中央に大きく描かれた花は「沈丁花(じんちょうげ)」。松任谷由実の『春よ、来い』を聴くたびに登山家のことを思い出し、登山家に贈る意味を込めています。

月の断面だけが写真で、焼いたクレープの表面を三日月と重ねる形で構成しています。

「C」の形は「逆三日月」とも呼ばれ、変わり者である著者自身のイメージと重なります。

100円玉で買えるぬくもり

初瀬川(大和川)

読んで頂いた方から「なぜ100円なのか」と尋ねられます。著者が幼少期の頃、双子の弟と故郷の初瀬川(大和川)の河川敷で、よく野球をして遊んだ記憶がきっかけです。

真冬の氷点下、手がかじかむほどの寒さのなかで、近くの自動販売機の100円ホットココアが手と心を温めてくれる。その経験から、「100円玉で買えるぬくもり」をイメージし、本書の価格も100円に設定しました。

『月とクレープ。』に登場する料理・飲食店

ヒマラヤのキャンプ飯

エヴェレストのダルバート・カレー

最初に登場するのは、ネパールの郷土料理「ダルバート」。
ひきわり豆のスープ「ダル」と白米「バート」を組み合わせた、ネパール式の定番カレー。エヴェレスト標高5500mの高地で食べたこの料理の記憶を綴っています。

クライマーとって最強のパワーフード。日本のネパール料理店でも食べられるので、ぜひ一度味わってみてほしいです。

龍が如く

龍が如く」は、2014年に訪れた東京・六本木の名店「日本料理 龍吟」の思い出を綴ったもの。上京前から、人生で一度は訪れてみたいと願っていた憧れの店で、現在は日比谷に移転。

なかでも印象深かったのが、「車海老の真薯と厚削りの鰹節で取った出汁」。これまでに飲食店で食べた料理の中で、最も美味しいと感じた一品でした。

チベタンの魔法瓶

『月とクレープ。』

チベタンの魔法瓶」は料理ではなく、お湯です。標高5500mのベースキャンプで、チベット人シェルパ(ガイド)が、氷河から雪を汲み、その雪を溶かして作ってくれた「タトパニ(お湯)」の話。ただのお湯ではあるが、高山病を救ってくれた命の水です。

都会の山

都庁グッドビュー東京とトーキョースリング

「都会の山」は、2019年4月30日まで東京都庁の北展望室45階にあったレストラン『グッドビュー東京』について綴ったエッセイ。
新宿で最も好きだった飲食店で、春・夏・秋・冬、自分へのご褒美として年に4回通っていました。ここで飲んだカクテル「トーキョースリング」は、くじけそうな背中を押してくれました。

雪消のミルクティ

『月とクレープ。』雪解のミルクティ

「雪解のミルクティ」は、エヴェレストで毎朝、シェルパが入れてくれたネパール・チャイ。ヒマラヤの雪を溶かしたタトパニに、マサラを加えてミルクで煮出す、あたたかな一杯です。標高の高い朝の眠気を、やさしく撫でてくれる味。寒さの中で手渡された温もりは、今でも忘れられません。

高円寺の沖縄

高円寺・抱瓶

東京・高円寺にある沖縄居酒屋「抱瓶(だちびん)」の憶い出を綴ったもの。スポーツ新聞社で校閲のアルバイトをしていたころ、慕っていた上司が幾度となく連れて行ってくれた店です。年が明けた元旦には、朝まで抱瓶で飲み明かし、そのまま寝正月を過ごすのが恒例でした。

寄せられたレビュー・口コミ

 tamagoさん

美味しいご飯を食べるとお腹だけではなく心も満たされる。幸せな気持ちで心をいっぱいにしてくれる、そんな作品。

過去を振り返って嬉しかったとき、辛かった
ときを思い出すと、そこには一生忘れられない「食」の思い出があることがある。著者にとってのそんな瞬間を切り取った本作は、自分の中に眠っていた「食」の記憶も思い出させてくれる。

 maiさん

描かれている食の情景は、どれもなぜか懐かしい。
何を食べるか、誰と食べるか、どんな状況で食べるか。
おいしい食事を想像してお腹をならし、かつ、胸をキュッとさせられる作品だと思いました。ラストがとても好きです。

K_456さん

その人だけの、その時だけのとびきり美味しいがある。
そんなお話を短く、濃く、お話してくれる。
どれも好きだけど、私のお気に入りはミルクティーの章。
生き返るようなミルクティーの味。
ヒマラヤなんて到底行けないところの、更にレアなエピソード。
私は、いつものミルクティーにスパイスと砂糖を入れるところだけ、真似してみる。

結 YUさん

筆者は、ふたつの山を登っている。
ひとつは、世の中全員が「世界で一番高いと知っている山」。
もうひとつは、文章を書くものだけが知っている「エヴェレストより高いかもしれない山」。

山への道行きで出会った至高の味たちをスパイスに描かれる、「ひと」。
シャイだけど、あたたかい。そしてたぶん、打たれ強くて前向き。
食を通じて見えてくるひとの体温から、筆者自身のぬくもりが伝わってくる。
筆者はいま、「物書き山」のどのあたりにいるのだろうか。

松田 好生さん

料理、食事には、世界にひとつだけのストーリーが隠されている。

時に甘かったり、時に苦かったり。

そんな思い出の扉をノックしてくれるこの本に、愛を込めて花束を。

匿名( Amazon カスタマー)さん

とても心地の良い作品。
登場する男の人達の優しさが短い文章の中に溢れていて素敵。
彦星さんは元気ですか。

ひとりひとりの「月とクレープ。」へ

今回、著者が自著について言葉を添えたのは、Googleで「月とクレープ。」と検索したときに表示される解説が気になったからです。
自動生成されたものであり、Googleに悪意はありません。ただ、「作者の意図」として受け取られてしまうと、読者に申し訳ない。そう思ったことがきっかけです。

これまで、作品のタイトルや表紙に込めた意味について説明してこなかったのは、読み手それぞれに自由に解釈してもらいたいからです。今回の補足を読んでも、「私は別の印象を受けた」と感じたなら、それを大切にしてください。

「こう書いてあるけれど、きっと本心は別にあるはずだ」と、読み手なりに深く読み解いてもらえるなら、それは著者として本当に嬉しいこと。

いつか、どこかで、誰かに、自分の大切な憶い出を語ってくれたら。この本がそのきっかけになれたのなら、それに勝る喜びはありません。

月とクレープ。Amazon  Kindle