
ライターになった2017年。理由は思い出せないが、夕食は毎日、新宿・小滝橋通りの丸亀製麺だった。
正社員ではなくアルバイトだったので、仕事は17時まで。空がまだ明るいうちに暖簾をくぐり、必ず「釜玉うどん(並)」を注文する。それが日課。当時は確か、300円台で食べられたと思う。
2018年、オフィスが表参道に移り、正社員に。通う店は青山の「丸亀製麺」に変わったが、変わらず頼むのは「釜玉うどん(並)」。自分でも不思議なほど、飽きなかった。
2019年、転職して早稲田にオフィスが移ってからは、自然と足が遠のいた。気づけば、小滝橋通りの店舗も閉店していた。
6年ぶりに再訪したのは、木村拓哉のYouTubeに感化されて。ミシュラン三つ星のグランメゾンから、丸亀製麺まで絵になる。自分にとって木村拓哉は神話の住人。
調べてみると、仕事場から徒歩50秒の三井ビルに丸亀製麺がある。アイ・カム・ウィズ・ザ・ウドン。

初めて入る店舗なのに懐かしい。木の温もりに包まれ、テーブルや椅子、仕切りにいたるまで濃い木目調で統一されている。どこか古風で落ち着いた雰囲気がありながら、清潔感とスタイリッシュ。この空間が好きだ。どうして6年間も来なかったのか。

丸亀製麺は、2000年に株式会社トリドールホールディングスによって創業された讃岐うどん専門の外食チェーン。店名は香川県丸亀市に由来するが、実際の創業地は庫県加古川市というユニークさ。
「打ち立て・茹でたて・できたて」にこだわり、店内で粉からうどんを製麺する“製麺所スタイル”。だから、リーズナブルな価格帯ながら、本格的な讃岐うどんのコシと風味を届けてくれる。

天ぷらやおむすびなどのサイドメニューも豊富で、セルフ方式で自由に選べるスタイル。
アルバイトだった頃、自分へのご褒美として、かしわ天やイカ天をトッピングしていたのを思い出す。

この日は、木村拓哉と同じ「釜揚げうどん(並)」370円を注文。つけ出汁には、青ねぎ・おろし生姜・胡麻をキムタク流にトッピングした。

まずは、何もつけずに麺をすする。神田店を訪れた木村拓哉は「甘味が先に来る」と語っていたが、新宿の味は塩がしっかり効いている。塩魔大王なので、うれしい味付け。
もう一品、木村拓哉おすすめの「いなり握り」150円。甘めの出汁が染みた油揚げが、塩気のあるうどんと抜群のセッション。
木村拓哉と香取慎吾がデュエットする大好きな曲「ひと駅歩こう」を思い出した。いなり握りに胡麻を振るのがキムタク流。
キムタク丼

木村拓哉のYouTubeが更新された。全日本大学野球選手権の観戦前、腹ごしらえ。
シンプルでいて強烈な一杯。白ごはんに明太子、そして温泉たまごをのせた丼。この三重奏、名付けて「キムタク丼」。
ぶっかけ(小)320円、白ごはん170円、明太子90円、温泉たまご110円。合計690円。

明太子のピリッとした辛味と塩気が、ごはんにじわりと染み込む。温泉たまごの黄身がとろけると、口の中でまろやかさが広がる。塩味と甘味、辛味と旨味。すべてが同居しながら、喧嘩せず、寄り添う。丸亀製麺がこの瞬間、グランメゾンに変わる。
誇張ぬきで、ファストフードの丼史上、最高の美味。今日のような雨の日に食べると、SMAP『どんないいこと』の優しさが聴こえてくる。

これだけでもじゅうぶん名曲なのだが、木村流の“味変ドリクス”がまた粋だ。
- Aメロ:刻みのり(単品での提供なし)
- Bメロ:うどん出汁
- サビ:ワサビ
刻み海苔を振り、うどん出汁を加えてお茶漬けに。そこにワサビを乗せて名曲が完成する。刻みのり、ワサビがなかったので、Bメロの「うどん出汁」だけかけることにした。これは木村拓哉のレシピ通り、刻み海苔、ワサビがあったほうがいい。

釜玉うどんは最高と至高。堂本剛と堂本光一のKinKi Kidsメシ。
新宿うどんの名店
日本のうどんの名店
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『月とクレープ。』に寄せられたコメント
美味しいご飯を食べるとお腹だけではなく心も満たされる。幸せな気持ちで心をいっぱいにしてくれる、そんな作品。
過去を振り返って嬉しかったとき、辛かったときを思い出すと、そこには一生忘れられない「食」の思い出があることがある。著者にとってのそんな瞬間を切り取った本作は、自分の中に眠っていた「食」の記憶も思い出させてくれる。