
春分の日なのに寒い日が続く。昨日は早朝から雪が降った。春寒の東京。板橋にある前野原温泉に入ったあと、で身体を温めたあと、ラーメンを求めて彷徨う。近くの店は1時間待ち。ならばと、新宿へ戻る途中でふと思い出した。巣鴨に、かつて衝撃を受けた一杯があった。

並んでいるだろうが、ラーメンなら回転は早いはず。Twitterの履歴を調べると『いま村』という名前だった。

2025年3月20日、春分の日。祝日の正午、当然のように行列ができていたが、回転は早そうだ。原田マハの『リボルバー』を片手に、待つことしばし。

前回は「煮干しらあめん醤油」を選んだ。ならば今回は「塩」。煮干し主体の醤油に対し、塩は鶏白湯がメイン。

まず、中太麺の光沢がいい。 ふくよかなコシを持ち、スープに沈んで旨味をたっぷり吸い込んでいる。持ち上げた瞬間に確信した。これは、旨い。
一口目で勝負は決した。
煮干しの存在感は控えめで、鶏白湯の旨味が麺のオーラとなって喉を駆け抜ける。濃厚でありながら、しつこさがない。洗練されていながら、中毒性がある。煮干しの風味が、鶏白湯をさらに際立たせる名脇役となっている。
鶏チャーシューの弾力、焼き具合。 ミシュラン三ツ星のフレンチのコースのメインに供されても遜色ない。しっとりとした肉質、噛むたびに広がる旨味。これほど完成度の高い鶏チャーシューには、なかなか出会えない。
そして、味玉の濃厚さが舌をリセットする。 絶妙な半熟具合。スープの塩気を受け止め、さらに引き立てるバランス感覚。
銀座『篝』と双璧をなす塩ラーメン。ラーメン界のグラン・メゾン東京。木村拓哉にロケで訪れてほしい。
これが1000円ちょっとなのが信じられない。大谷翔平をはじめ、来日したMLB選手たちが日本のラーメンのコスパに驚愕するのも当然だ。世界のどこを探しても、このクオリティでこの価格の料理は存在しない。

あえて言えば、ネギと玉ねぎの苦味が強い。 食感のアクセントと動物系の臭みを取るためだが、ここまで洗練された煮干し鶏白湯なら、もはや薬味はなくてもいい。
接客は決して愛想がいいとは言えない。むしろ無愛想に近い。だが、そんなことはどうでもいい。この圧倒的な匠の技と味が、また足を運ばせる。
並んででも食べたいラーメンは多くない。だが、この一杯は、そのひとつだ。
2021年1月23日
初訪問時の「煮干しらあめん醤油」
煮干しのクセの強さは失わず、上品×魔性の小悪魔ラーメン。
味玉の刻字にプライドを感じた。恵比寿駅の目の前の立地の良さに負けない。
丼に残る魚粉が、凛として煮干し。
東京のおすすめラーメン
記憶を超えた一杯
モンスターのラーメン「篝」
食の憶い出を綴ったエッセイを出版しました!

『月とクレープ。』に寄せられたコメント
美味しいご飯を食べるとお腹だけではなく心も満たされる。幸せな気持ちで心をいっぱいにしてくれる、そんな作品。
過去を振り返って嬉しかったとき、辛かったときを思い出すと、そこには一生忘れられない「食」の思い出があることがある。著者にとってのそんな瞬間を切り取った本作は、自分の中に眠っていた「食」の記憶も思い出させてくれる。