
- 価格:税込205円(セブンイレブン)
- ジャンル:ラクトアイス
- 製造:江崎グリコ株式会社
- カロリー:100 kal(1粒)
グリコのパピコ チョココーヒーは、“ふたりで分ける幸福”を50年近く背負って走り続けてきた、冷たい名作である。
205円で、グリコの歴史と、分け合う楽しさと、チョコとコーヒーの余韻まで手に入る。コストパフォーマンスという言葉では少し足りない。これはもはや、冷凍ケースに置かれた“小さな文化財”だ。

パピコは1974年の発売以来、長く愛されてきたチューブタイプのフローズン・スムージーである。発売当初から、2つに分けられるチューブ容器に入っている。この時点で偉い。ただおいしいだけではなく、最初から「誰かと分ける」ことまで設計されている。アイスのくせに、妙に人間関係ができている。

歴史をたどると、まず1974年に<乳酸ミルク>が発売された。そして1977年から、パピコの代名詞である「チョココーヒー」が発売された。この“チョココーヒー”こそ、いまやパピコの顔。看板。王道。冷凍庫界のセンターだ。

最初は縦型のパッケージだったが、1987年から横向きになった。ここも面白い。アイスの歴史は味だけではない。姿勢まで変わる。そしてそこから、様々なフレーバーが発売されている。だが結局、多くの人が帰ってくるのはこのチョココーヒーである。やはり王道は強い。

商品名の由来もいい。“ぱぴぷぺぽ”が入った名前の商品はヒットする、というジンクスがあった。たとえば、ポッキー、プリッツ、カプリコ。たしかに、全部強い。音からしてもう売れる気がしている。
それに加えて、パピコという名前は語感のリズムがよく、子どもにも覚えやすく、発音しやすい。そうした理由から名付けられた。
「パピコ」という響き、妙に口が楽しい。言った瞬間、少しだけ機嫌がよくなる。ネーミングの段階ですでに勝っている。
そして、この商品の最重要ポイントはやはり“2本で1つ”という構造だ。1970年代、グリコはW(ダブル)ソーダアイスという、2つに分けられるバーアイスを発売していた。仲の良い友達同士で分け合える、親子で気軽にみんなで分け合って食べられるアイス。そんな思想を受け継いで「パピコ」が発売された。
企画当初は1本で検討していたものの、それではなかなか「パピコ」らしさを出せなかった。ところが、グリコWソーダアイスにならって「2本で1つ」にしたところ、そこに楽しさが加わり、急にお客さんの支持を得ることができて発売に至った。
おいしさだけでは足りない。“楽しさ”が加わって初めてパピコになったのだ。つまりパピコとは、味と構造が一体になった発明なのである。
8月5日は「パピコの日」。数字の見た目も語感も、なんだかパピコっぽい。この記念日があることで、パピコは単なる商品から、季節の風物詩へと一段上がっている。

そして王者・チョココーヒー。これはチョコとミルクコーヒーを絶妙にブレンドしたフレーバーである。しかも2008年から生チョコを加え、ヒット。ただのコーヒー味では終わらない。チョコの丸み、コーヒーのほろ苦さ、そして生チョコのなめらかな厚み。この三層構造みたいな贅沢さが、パピコを“子どものおやつ”の枠から軽々と飛び越えさせている。
見た目もいい。かなりいい。まずパッケージが強い。ブラウンからミルキーなベージュへ流れる色使いが、もう完全に“飲むカフェオレの高級感”をまとっている。そこに大きく入ったpapicoのロゴ。親しみやすいのに、長年生き残ってきた自信がある。さらに、パッケージには「とろける、なめらかさ」、「生チョコレートとコーヒーの深いコク」とあり、見る前から口の中に冷たい余韻を発生させてくる。

実物のチューブも独特で美しい。あのくびれたボトルのような形が、他のアイスにはない。手に持つだけで“パピコを食べている感”があるし、2本並べるとちょっと可笑しくて、ちょっとかわいい。凍った表面の細かな霜まで含めて、見た目に温度がある。
つまりパピコは、パッケージも本体も、“おいしさの説明”がうまい。
味わいは、チョコとコーヒーのコクで、コールドのカフェ・オ・レを飲んでいるような風味。ただ甘いだけではない。コーヒーの気配がちゃんとあるから、大人の舌にも届く。なのに、子どもでも親しめる。
この“子どもも大人も両方いける”感じが、実にパピコらしい。分け合う構造と同じで、味わいまで間口が広い。『シャレード』でオードリー・ペプバーンがパリで食べていたアイスを思い出す。パピコは急におしゃれになる。急にシネマになる。
実際、チョココーヒーのまろやかで洗練された風味には、どこかヨーロッパ映画の街角みたいなムードがある。親しみやすいのに、ほんの少しだけ気取っている。その絶妙なバランスがたまらない。
そこには半世紀分の工夫と、親しみやすさと、分け合う楽しさがきれいに凍っている。パピコ チョココーヒーは、ひとりで食べてもおいしい。でも本質はきっと、“誰かと半分こすると、もっとおいしい”にある。その思想ごと、冷たくて、なめらかで、やさしい。

そして今、“分け合う幸福”の系譜に、もうひとつ見逃せない一本がある。「パピコ ホワイトサワー濃い味」である。1974年に発売された初代パピコの「乳酸ミルク」を継ぐ味。
夏の空と雲、乳酸菌飲料の記憶そのものを、そのまま冷凍パックに封じ込めた色使い。
実際に味わうと、その印象は裏切られない。ひと口目、まず来るのはホワイトサワー特有のやわらかな甘み。すぐに乳酸菌飲料らしい酸味が追いかけてきて、舌の上をきゅっと引き締める。ただ甘いだけではない。ただ酸っぱいだけでもない。
甘すぎず、濃い。このパピコ、濃厚につき。
なめらかな口当たりの奥に、ホワイトサワーの味がきっちり詰まっている。薄い乳酸系アイスにありがちな、「冷たいけど印象が弱い」ということがない。ちゃんと味がいる。ちゃんと残る。ちゃんと記憶に引っかかる。
食感もまた、実にパピコらしい。なめらかなフローズンスムージーという言葉どおり、氷菓のシャリッとした粗さではなく、するすると押し出され、舌の上でほどけていく独特の質感。ホワイトサワーのまろやかな酸味と、このなめらかさの相性が抜群にいい。
冷たいのに尖っていない。酸味があるのにきつくない。濃いのに後味はすっと引く。この矛盾を成立させているところが、パピコのうまさだ。
チョココーヒーが“王道の深み”だとしたら、ホワイトサワー濃い味は“爽やかさの中の密度”で勝負してくる。色で言えば白。印象で言えば軽やか。なのに、味だけはきっちり濃い。この見た目と中身のギャップが、なんとも現代的で、なんとも抜け目がない。
半世紀近く、“分け合う幸福”を冷凍ケースの中で磨き続けてきたパピコは、チョココーヒーだけでは終わらない。ホワイトサワー濃い味には、白い見た目の奥に、ちゃんと現代の嗜好が詰まっている。やさしくて、なめらかで、濃い。そしてやっぱり、二人で分けると少しだけ機嫌がよくなる。
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グリコさんの名品
食の憶い出を綴ったエッセイを出版しました!

『月とクレープ。』に寄せられたコメント
美味しいご飯を食べるとお腹だけではなく心も満たされる。幸せな気持ちで心をいっぱいにしてくれる、そんな作品。
過去を振り返って嬉しかったとき、辛かったときを思い出すと、そこには一生忘れられない「食」の思い出があることがある。著者にとってのそんな瞬間を切り取った本作は、自分の中に眠っていた「食」の記憶も思い出させてくれる。