食いだおれ白書

世界を食いだおれる。世界のグルメを紹介します。孤高のグルメです。

「すし屋 銀蔵 」新宿センタービル店〜仕事から15秒、口福一直線

すし屋 銀蔵 新宿センタービル店

仕事場から歩いて15秒にお寿司屋さんがある。こんな贅沢ない。「すし屋 銀蔵」は昭和59年創業の株式会社だん家が運営する寿司のチェーン店。都内に30店舗を構える。

すし屋 銀蔵 新宿センタービル店

新宿センタービル店は平成24年(2012年)に開業。もう10年以上の歴史がある。

松鮨,高田馬場

会社員時代、オフィスの目の前にある『松鮨』のランチに通った。海鮮丼はもちろん、海老で出汁をとった味噌汁が滋味深い。これで700円は罪悪感すら感じた。フリーランスの物書きになってから寿司ランチはやめたが、寿司屋さんがあるなら入るしかない。

すし屋 銀蔵 新宿センタービル店

店内は102席と広いが、ここは新宿壱番街。リーマンの方々で溢れる。スタッフのがおそらく主婦のアルバイトの女性。上等な着物の鮨屋さんは緊張で肩が凝るが、なか卯に来たような親しみがある。この柔らかい店の空気が好きだ。

さくら握りセット980円

すし屋 銀蔵 新宿センタービル店

店の実力は、一番安いメニューに表れる。8種類の寿司に味噌汁、茶碗蒸しがついて980円。手を抜いていない。この内容で1000円を切るのは、かなりの贅沢。

味も良いが滞在時間も素晴らしい。13分。江戸時代、寿司は屋台でチャチャっと食べるファストフードだった。午後から予定が詰まっているときに大助かり。

おまかせ握りセット2680円

すし屋 銀蔵 新宿センタービル店

財布に余裕があるなら、ぜひこのコースを。友人の退職祝いに。僕は食べたことがない。タネが豪華。いくら、うに、穴子まで楽しめる。

すし屋 銀蔵 新宿センタービル店

天ぷらがついてくるのが、さすが江戸っ子。

ネギトロとろろ丼 1000円

すし屋 銀蔵 新宿センタービル店,ネギトロとろろ丼

寿司以外のメニューも侮れない。ネギトロととろろがふんわりと絡み合い、風味も食感も優しい丼。茶碗蒸しと味噌汁との相性も抜群で、学園ドラマのような仲良し三人組ランチ。小さな感動が詰まっている。

鶏の唐揚げ定食 1000円

すし屋 銀蔵 新宿センタービル店〜仕事から15秒、口福一直線,鶏の唐揚げ定食

5月29日。昼食をローソンのパンだけで済ませて、アパートに戻り、引越しの準備をする予定だった。ところが、執筆が思うように進まず、準備は中止。

腹が減っては執筆も進まぬ。こういうときは、頼りになる銀蔵さんへ。

「寿司屋で唐揚げ定食?」と、ツッコミたくなるだろう。これには忘れられない憶い出がある。

大学の卒業旅行。弟と友人と3人で、奈良から車を走らせて北海道を旅した。
帰りは、富山の黒部ダムを訪れ、岐阜では「白線流し」ごっこをしてから帰宅。奈良に戻ったのは夜の8時過ぎ。

「何を食べようか」と車を走らせていた時、開通したばかりの中和幹線沿いに、新しくできた回転寿司「函館市場」の看板が目に入った。一皿200円ほどの寿司は、なんと本場・函館の朝市で食べた海鮮丼より美味しかった(ホンマの話)。

特に衝撃を受けたのが、北海道名物の唐揚げ「ザンギ」。濃い味付けがクセになり、「こんなうまい唐揚げが世の中にあるのか」と、目からウロコが100個くらい堕ちた。

食後は近くのジャスコでスパークリングワインを3本買い、F-1のシャンパンファイトの真似をした。でも、思い出に残っているのはザンギの包容力。あの味が、寿司やワインよりも、旅のゴールを温かく迎えてくれた。

あれから20年。新宿にいても、唐揚げへの愛情は変わらない。銀蔵の唐揚げは、そんな記憶にも応えてくれる。

衣はサクサク、中はプリプリ。しっかり濃い味付けながらも、鶏の淡白な旨みをしっかり活かしている。揚げ方が絶妙なのか、味付けが巧みなのか、バランスが絶妙。

午後の執筆をふたたび動かす力になってくれる。

「寿司屋の唐揚げ」
未体験の方は、ぜひ一度お試しあれ。

すみれ握りセット 1300円

すみれ握りセット 1300円

6月6日(金)。上野の森美術館に「五大浮世絵展」を観に行く予定を中止。執筆が溜まりすぎて、それを許さなかった。せめて昼から、SOMPO美術館の「藤田嗣治展」に行きたい。仕事から歩いて2分。6回目の鑑賞なので、チャチャっと回れる。

昨夜、大好きな漫画『江戸前の旬』を読んでいたら、寿司への渇望が湧き上がってきた。予定が崩れた焦りを鎮めるように、昼は少し贅沢。

すし屋 銀蔵 新宿センタービル店〜仕事から15秒、口福一直線

選んだのは「すみれ握りセット」。1300円。初めての注文だったが、名の通り、ひと皿ひと皿に花のような気品がある。980円から2品増えて10品。

久しぶりの寿司は、やはり美味かった。味噌汁の湯気も、茶碗蒸しのやさしさも、五臓六腑に染みわたる。ネタのすべてが丁寧で、手を抜いていない。中でも、白身のイカが良かった。

すし屋 銀蔵 は、ワサビが強烈。学生の頃は苦手だったが、社会人になってからその刺激が、むしろ心地よい。疲れた身体に、ぴりりと一閃。仕事の気合いを注入してくれる。

「ワ」は脇役に徹すること。
「サ」は先を読むこと。
「ビ」は美意識を忘れないこと。

午後からの執筆に向けて、静かにエンジンがかかった。

  • 店名:すし屋銀蔵 新宿センタービル店
  • 電話:050-5487-2444
  • 席数:102席(座敷、掘ごたつ、カウンター)
  • アクセス:新宿駅 西口 徒歩5分
  • 営業:11:30~14:30、17:00~22:30
  • 定休:土日祝
  • 支払い:クレジットカード、PayPay

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