
- 価格:180円(税込)
- ジャンル:菓子
- 製造:江崎グリコ株式会社
- カロリー:16.5 kal(1粒)
この小さな箱の中には、甘さだけではなく、歴史と思想とロマンがぎっしり詰まっている。「アソビグリコ」は、グリコの原点であると同時に、日本のおやつ文化の原点でもある。

1922年2月11日、大阪三越で「グリコ」が本格的に発売され、この日はそのまま江崎グリコの創立記念日となっている。アソビグリコは、単なるロングセラーではない。日本のお菓子史に堂々と刻まれた“始まりの味”なのだ。
両手をあげてゴールインするパッケージ、そしてハート型のキャラメル。赤を基調にした箱のデザインは、レトロでありながら異様に生命力がある。正面に立つランナーの姿は、菓子パッケージというより、幸福へのゴールテープを切るためのアイコン。
2段重ねのパッケージになっていて、下段にはキャラメル、上段にはミニサイズのおもちゃが入っている。この構造自体がすでにワクワクの設計図だ。

箱の上段はポップでカラフル、下段はおなじみのグリコレッド。クラシックなのに古びない。むしろ“完成されたレトロ”として、めちゃくちゃ洒落ている。ハート型キャラメルは、丸みがあってやさしく、ころんと愛らしい。この“食べる楽しさ”と“遊ぶ楽しさ”が同じ一箱に同居している感じが美しい。個包装までグリコのランナーがしっかり走っていて、抜かりがない。小さいのに世界観が完璧だ。
おもちゃが誕生したのは昭和2年。「子どもたちにとって、食べることと遊ぶことは二大天職。子どもの栄養補給剤になる栄養菓子のグリコと、心の発育に役立つおもちゃをひとつにしよう」という、江崎グリコ創業者・江崎利一の尽きぬ想いがあった。ただ甘いものを売るのではない。体にも心にも届くものを届けたい。その思想が、アソビグリコには最初から入っている。
この“遊び心”には歴史の積み重ねがある。1922年には、グリコのおもちゃのルーツともいえる「絵カード」がお菓子と一緒に封入されていた。1927年には、豆玩具が封入されるようになる。さらに2年後の1929年には、ついに「おもちゃ小箱」が登場。
アソビグリコの上段は、突然思いつきで生まれたのではない。子どもたちを喜ばせたいという願いが、少しずつ形になって進化してきた到達点なのである。

そして、あのハート型キャラメルにも理由がある。角張ったものより丸みのあるほうが、幼児が口に入れた場合でも楽になめられることができ、舌ざわりが良いと考えたから。ただ可愛いからハート型なのではない。ちゃんと子どものことを考え抜いた結果なのだ。
とはいえ、当時の技術では、やわらかいキャラメルをハート型にするなんて至難の業。普通ならそこで諦めそうなものだが、グリコは違った。なんと「ハート型ローラー」を自社で開発して、製造にこぎつけたのである。かわいさの裏側に、執念と技術開発がある。これが老舗の底力だ。

さらにグリコは、夢だけでなく数字でも語ってくる。「アソビグリコ」(キャラメル)には、実際に一粒で300メートル走ることのできるエネルギーが含まれている。「アソビグリコ」一粒は16.5 kcal。年齢20歳の男性が分速160mで走ると、1分間に使うエネルギーは8.71 kcal。つまり「アソビグリコ」一粒で1.89分、約300m走れることになる。
この説明、真面目なのにどこか夢がある。「一粒300メートル」は有名なフレーズだが、ちゃんと計算してくるあたりが実にグリコらしい。ロマンと実務が同居している。

そして忘れてはいけないのが、ゴールインマークの誕生秘話だ。江崎グリコの創業者がキャラメルの「グリコ」を考えたとき、製品と同時に、「おいしさと健康」をあらわす「名前やマーク」についても考えていた。そんなとき、子どもがかけっこをしてゴールインする姿を見て、「これだ!」とひらめいたのが、あのマークだった。
マークが決まるまでにはいろんな姿を研究したものの、特定のモデルはなく、時代に合わせて変わってきている。だからあのランナーは、誰か一人ではない。時代ごとの元気や希望そのものを背負って、ずっと走り続けている存在なのだ。

中身の個数にも、時代の流れがある。創業当初はキャラメルが4つだったが、現在は8つ。小さな変化に見えて、ここにも長い年月を走り抜けてきた商品の歩みがある。
そして最後に、味わい。このキャラメルは、包み込むような甘さをしている。強引ではない。押しつけがましくもない。
仕事に疲れたとき、人生に疲れたとき、そっと甘やかしてくれる。これはもう単なる子どものためのお菓子ではない。子どものためのお菓子ではなく、疲れたオトナが子ども頃の心に里帰りするためにある。
アソビグリコは、食べると少し元気が出る。遊ぶと少し心がゆるむ。見た目はかわいく、思想は深く、歴史は強い。
180円(税込)で買えるのは、キャラメル8粒とミニおもちゃだけじゃない。100年を超えて走り続けてきた“おいしさと健康”、そして“食べることと遊ぶこと”の哲学そのものだ。
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『月とクレープ。』に寄せられたコメント
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