
「赤湯ラーメン 龍上海」は、山形県南陽市赤湯に本店を構える、辛味噌ラーメンの元祖として知られる老舗ラーメン店。創業は昭和33年(1958年)。初代・佐藤一美が、当時珍しかった味噌ラーメンに特製の辛味噌を加えた「赤湯からみそラーメン」を考案し、その独特の味わいが評判を呼んだ。

龍上海のラーメンの特徴は、コシのある太縮れ麺と、鶏ガラ・魚介をベースにしたコクのあるスープに、看板メニューである「からみそ」が乗せられている点。食べ進めるうちに辛味噌がスープに溶け出し、味の変化を楽しめるのが魅力。
現在は南陽市の本店をはじめ、山形市、米沢市、仙台市などに支店を展開し、多くのラーメン愛好家に親しまれている。全国のラーメンイベントにも出店するなど、その名は広く知られるようになり、地元だけでなく県外からも多くのファンが訪れる。
吹雪く蔵王と赤湯からみそラーメン

「龍上海」を訪れたのは2022年2月。蔵王の厳冬を目指す道すがらのことだった。店に入ると、外の凍える空気とは対照的に、活気に満ちた温もりがあった。地元の客たちが湯気の立つ丼を前に黙々と箸を運ぶ。壁には長い歴史を物語るようなメニュー表と、どこか懐かしい赤い暖簾。迷うことなく「赤湯からみそラーメン」を注文した。
しばらくして、目の前に現れた丼は、東北の冬空に灯る炎のようだった。澄んだスープの上に、鮮やかな赤い辛味噌がこんもりと乗っている。この地の厳しい寒さに抗うような、力強い存在感を放っていた。
深みのある味噌のコクと、魚介の出汁が絶妙に絡み合い、舌の上に広がる。その瞬間、生涯でこれほど美味い味噌ラーメンを知らないと確信した。
太縮れ麺を持ち上げ、口に運ぶ。もちもちとした食感が心地よく、スープがよく絡んでいる。辛味噌を少しずつ溶かしていくと、味の変化が楽しめる。徐々に舌が熱を帯び、身体の芯から温まっていくのがわかった。
隣に座る「東北の母」も、黙々とラーメンをすすっていた。そして、一言だけ呟いた。「これは…登る前の体に染みるな。」
最後の一滴までスープを飲み干し、静かに席を立った。蔵王の峰はまだ遠い。しかし、この一杯が、きっと支えてくれるだろう。ラーメンにはそんな力がある。
湯冷め知らずの名湯「赤湯温泉」
食の憶い出を綴ったエッセイを出版しました!

『月とクレープ。』に寄せられたコメント
美味しいご飯を食べるとお腹だけではなく心も満たされる。幸せな気持ちで心をいっぱいにしてくれる、そんな作品。
過去を振り返って嬉しかったとき、辛かったときを思い出すと、そこには一生忘れられない「食」の思い出があることがある。著者にとってのそんな瞬間を切り取った本作は、自分の中に眠っていた「食」の記憶も思い出させてくれる。