食いだおれ白書

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西新宿チャーシュー麺専門・中華そば「ピース」〜清潔な一杯に、ほんの少しのスキャンダルを

チャーシュー麺専門・中華そば「ピース」

新宿という街は、四季のようにラーメン屋さんが生まれては消えていく。パスタの食材を買いにスーパーに向かう途中、ふと、ニューカマーの店に出逢うことも多い。

視線の端に、まだ見ぬ暖簾が揺れていた。看板には、穏やかな緑色の文字で「ピース」。「おや?こんな店があったのか」と、ナポリタンを作る予定が、後ろ髪をひかれて入店。食欲というより、興味のほうが先に反応していた。

チャーシュー麺専門・中華そば「ピース」

チャーシュー麺専門・中華そば「ピース」は、2024年12月12日オープン(気づかなかった)。コンセプトは天然素材を使ってミシュラン店出身のシェフが作るラーメン。

チャーシュー麺専門・中華そば「ピース」

チャーシュー麺専門だが、個人的にチャーシューは少量でいい派なので、「味玉ラーメン」1130円を注文。

チャーシュー麺専門・中華そば「ピース」

ミシュランの店主は休みのようで、厨房はアジア系の外国人男性がふたり。案内係としてアジア系の女性がひとりの3人体制。12年も住んでいながら、ここが新宿であることを、改めて感じる光景だ。

チャーシュー麺専門・中華そば「ピース」

味玉ラーメンが着丼。見惚れるような佇まい。もう美味しいに決まっている。黄金色のスープに浮かぶ、端正な細麺。渦巻きナルトがひとつ、無垢な主張をしている。看板に偽り無しの、洗練された上品な麺料理。

太麺が好みだが、ストレートなのはうれしい。スープは魚介を炙った香ばしさ。澄んだ味が鼻腔を抜ける。

チャーシューは東京會舘のローストビーフのように上品で、中華というよりフレンチの片鱗。味玉も濃厚で雑味がない。メンマも歯応えが心地いい。カイワレも苦味なく、食感のアクセントのいい仕事をしている。

破綻のない構成に、作り手の美意識を感じる。ラーメンをジャンクフードにしない意気込みが感じられる。ただ、らーめんは、そのジャンク感があると味が深くなるのも事実。

あっさりが好みの女性や外国人に最高のラーメン。このまま経営を続けたら、さらに味が磨かれて美味しくなるポテンシャルもある。

現在は、完璧であるがゆえに、揺らぎがない。理想的であるがゆえに、記憶の中で暴れはしない。店名の「ピース」の通り、平和主義者のラーメン。

喩えるならスキャンダルがない清純派女優。しなやかで、透明で、美しい。ただし、味が想像できる範囲。

ジャンクに育った麺ヘラとしては、明日も来てしまうような危うさはない。ここは新宿だ。ミシュランの腕を常識打破に繋げるところも見てみたいところ。

理想のラーメンは、背徳感満載のサロメ峰不二子のようなファム・ファタル(魔性の女)。

今後、遊び心を加えるのか、清廉さを貫くのか。行く末が愉しみなラーメン屋さんが現れた。

冷やしラーメン

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ピースが満を持して「冷やしラーメン」始めました。価格は潔く1000円。小細工のない直球勝負。夏にぴったりの一杯だ。

本当はワンタン麺を食べるつもりだった。でも、券売機の「冷やしラーメン」のボタンが、真夏の青空のように澄んだ顔でこちらを見ている。指はそのボタンを押していた。

前回、「魔性が足りない」と書いた。ならば冷やしにすることで、シャロン・ストーン氷の微笑が加わるかもしれない。

だが、意外にも「さらなる上品さ」。凛として澄み渡った、水面に光が差すような一杯。

いや、待て。冷やしラーメンに求めるのは「魔性」じゃない。必要なのは、清涼感だ。ピースはその本質をしっかりと掴んでいた。

麺は都内屈指の冷え具合。キンキンという表現では生ぬるい。これはもう「凍る一歩手前」。ドラクエで言えば“軽いヒャド”。その冷たさが、火照った心と体に染み渡る。

そこに、ほんのり甘いタレ。レモンの爽やかさも加わって、疲労のベールが一枚ずつ剥がれていく。

氷の微笑ではなく、mihimaru GTの『マジカルスピーカー』。あの頃のJ-POPが持っていた、瑞々しくて無邪気。ピースの冷やしラーメンには、現代が失ってしまった透明感が残っていた。

チャーシュー麺専門・中華そば「ピース」

  • 月・火・水・木・金:11:00 - 21:30
  • 土:11:00 - 20:00
  • 日:定休日

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