食いだおれ白書

世界を食いだおれる

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

「焼肉こよい」は奈良県桜井市国道169号線にある焼肉屋さん。1967年の創業。物心ついた頃から30年以上通っている。大学生になるまで野菜も魚も食べられない肉食獣だったのは「焼肉こよい」の影響かもしれない。ブラインド焼肉をしても、焼肉こよいの肉を当てられる。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

暖簾の前に来たときから焼肉は始まっている。お店の外に香ばしい肉の匂いが漂う。ブラックホールのように肉の迷宮にいざなわれる。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

カウンターと椅子もあるが30年間座敷。ゴロゴロと寝転べるし、小さな姪や甥と走り回って遊べる。壁には相撲力士のサインと大和三山の絵画。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

50年以上、焼肉の煙に炙られた頂点。今も女将さんの旦那さんが創業。2014年、僕が大学生のときに亡くなられた。今は女将さんと娘さんの二人で切り盛りされている。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

まずはキャベツと自慢のタレが食前酒。コロナの緊急事態宣言中でも営業し、「いつでも帰ってきてください」と快く歓迎してくれた。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

はじまりはいつも塩タン。レモンだけかけて食べる。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

肉旅のお供はコカ・コーラ奈良県桜井市は車じゃないと移動できない。近くに桜井警察署があるが、仕事終わりの警察官がよく車できてフツーにビールを飲んでいたことがある。昭和、平成の遺産だ。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

いつも肉は盛り合わせ、お任せコース。好き嫌いないから、その日の美味しい部位を切り分けてくれる。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

昔はロースとカルビしか食べられなかったが、今の一番のお気に入りはミノ。焼肉の部位ではハラミと並んで好きだ。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

必ず注文する卵スープ。桜井のオアシス。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

ロースは30年間お世話になっている。

焼肉こよい〜奈良県桜井市のオアシス

肉の油が口に回ってきたら日本一美味しいキムチの登場。大げさではなく本当に日本一美味しい。いつも大阪の鶴橋から仕入れてる。ここより美味しいキムチがあればコメントで教えて欲しい。帰省するたび、ここに帰ってくる。通う焼肉ではなく焼肉屋に帰る。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

奈良県桜井市の冠婚葬祭は桝谷(ますたに)。ご主人は大の話好きで一度口が開くと止まらない。桜井市出身の芸人・笑い飯 哲夫と幼馴染で常連。結婚披露宴も桝谷で挙げた。大型バスもご主人自ら運転し送迎。法事のときにお世話になる。カウンターで頂く「味の風にしむら」とは真逆。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

広くて小さな子供や赤ちゃんがいても安心。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

会席料理(基本コース)5,000円。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

大勢の親戚が集まるとき、美味しい食を用意してくれる。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

お肉もたっぷりで、お腹も満杯。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

豪快から繊細まで。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

季節の変わり目を料理がおしえてくれる。

割烹・仕出し 桝谷〜奈良桜井市の日本料理

商品名は商標登録中だが、桜井市天皇の名前の和菓子を創作。こし餡とサクサクの春巻き。熱々で優美な風味と食感。本物の三輪そうめんが消えていく中、新しい故郷の自慢。『割烹 桝谷』で召し上がれ。

まほろばキッチン〜大和の悠久と未来

まほろばキッチン橿原

 「まほろばキッチン」はJAが運営する道の駅。地方の農産物の直売所、産直レストラン、フードコートで構成している地産地消」の輪を広げる場。

まほろばキッチン橿原

まほろばキッチン橿原

奈良の動脈、桜井と橿原市を結ぶ中和幹線沿いにある「まほろばキッチン橿原」。それぞれ大和三山の名を冠している。真ん中の「うねび」は畝傍山奈良県の農産物の直売所。

まほろばキッチン橿原

「かぐやま」はフレンチやバイキングなどのレストラン。桜井市の「天香山」が見守る。

まほろばキッチン橿原

フードコートが「みみなし」。最も近い耳成山。他県から来たときはぜひ大和三山も巡ってほしい。それぞれ15分くらいで登れる。

まほろばキッチン橿原

額田女王安田靫彦にも食べてもらいたかったフードコートを紹介しよう。

メゾンドパネトリー

まほろばキッチン橿原

フードコート「みみなし」にかる小さなカフェ「メゾンドパネトリー」。手作りと味にこだわった奈良のベーカリーである。Kintobiトースト&珈琲セット380円。奈良の湯種食パン。湯種は小麦粉に熱湯を加えてこねて熟成させる調理法。食パンのモチモチが桁違い。パリパリ食パンが好みと思ったら美味すぎてビビった。食パン・オブ・JAPAN🇯🇵

十津川うどん古道

まほろばキッチン橿原

奈良県の最南端、和歌山との県境に位置する十津川の名産を集めた「うどん古道」

まほろばキッチン橿原

キツネうどん640円。ダウンタウンが愛した道頓堀「しなの路」と似た甘い出汁。十津川名物めはり寿司は高菜の浅漬けの葉で包むソウルフード。シャクシャクの食感が嬉しい。額田女王の歌が蘇るやさしさ。

まほろばキッチン橿原

十津川温泉コーヒーとおはぎセット600円。十津川温泉の水を沸かして作るコーヒー。程よいビターと甘み。おはぎはお茶より珈琲。

活魚・ちゃんこ 一語一笑 / 桜井市

一語一笑/奈良 桜井

ふるさとの自慢をさせてほしい。冬になると必ず行きたい、必ず食べたい塩ちゃんこがある。控えめに言って日本一。ちゃんこ•オブ•日本。

活魚・ちゃんこ 一語一笑 - 桜井市

活魚・ちゃんこ 一語一笑。「いちごいちえ」と読む。ステキな名前だろう。店内に入ると生け簀があり、イキのいい魚が遊泳している。

活魚・ちゃんこ 一語一笑 - 桜井市

邪馬台国があった奈良県桜井市。山がない大和の国に不釣り合いな活魚料理店。長年、敬遠してしまっていた。もっと早く行っておけばと悔やんだものである。

【一語一笑/奈良 桜井】

豪快な塩ちゃんこ鍋のほかに、繊細なふろふき大根も美味。

活魚・ちゃんこ 一語一笑 / 桜井市

小さな子ども連れでも喜ぶメニューがいっぱい。太陽がいっぱい。4歳の甥も7歳の姪も大喜び。マカロニグラタン750円。

活魚・ちゃんこ 一語一笑 / 桜井市

鍋の前に肉料理。これでメインイベンター、真打の登場を待つ。

活魚・ちゃんこ 一語一笑 / 桜井市

名付けて日本一の塩ちゃんこ。一人前2500円。函館・三重・岡山•舞鶴など全国の食材を集めた鍋。バランス、出汁の旨み、奈良でこんなに美味しいちゃんこが味わえるとは目から鱗が467個くらい落ちる。贔屓ぬきで、ちゃんこ•オブ•日本。

活魚・ちゃんこ 一語一笑 / 桜井市

締めの雑炊400円まで完璧なリレー。パーフェクト・ゲーム達成の鍋料理。冬の訪れを待ち侘びて、今年も故郷へ帰る。

雨風本舗〜熱海のラーメンは熱く

雨風本舗〜熱海の風は熱く

伊豆へ向かう踊り子号の車窓から熱海のブルーオーシャンが見えたとき、窓際の席にいた映画ライターの方が思い出を話してくれた。「駅の近くに美味いラーメン屋があるんだよ。2017年に『火花』の撮影を取材したとき帰りにスタッフたちと食べたんだ。菅田将暉桐谷健太は一緒じゃなかったけどね。けっこう美味いから行ってよ」。熱海は憧れの場所でありながら一度も降りたことがない。2016年にエヴェレストから帰国したとき、日本が退屈に思えた曇り目を晴らしてくれたのが踊り子号から見た熱海の海だった。でも、行けるとしても2、3年後だろう。そう思っていたら帰りの新幹線がストップ。熱海で足止めになり、「あのラーメン食べようぜ」と、まさかの翌日に行けることになった。

雨風本舗〜熱海の風は熱く

雨風本舗は熱海の駅前商店街の中にある。昭和を真空パックしたようなボロい佇まい。よく、ここに入ろうと思ったもんだ。店内は大相撲中継。当然お客さんは、おっちゃんたち。女性ひとりでは入れないだろう。

雨風本舗〜熱海の風は熱く

“昔ながら”のラーメンは多いが、そのまま”昔”の美味しさ。醤油一本勝負。もちろん、他の出汁と合わさって洗練された令和の味。だが、味わいが「昭和」。昭和風ではなく、昭和。

雨風本舗〜熱海の風は熱く

塩味が効いたチャーハンの絶品。醤油と最高にマリアージュする。けしからん旨さ。

雨風本舗〜熱海の風は熱く

21時半にやっとの思いで到着したら、映画で観るような祟りとしか思えない雷雨。雨風本舗の言魂ラーメン、言魂チャーハンの力は偉大なり。

旬の味ごろさや〜伊豆下田

旬の味ごろさや

嘉永7年(1854年)、マシュー・ペリー率いる黒船が来航した下田港の近くに『旬の味ごろさや』はある。名前は先祖の「五郎三郎」の名前からとって「ごろさや」。ご主人が漁師で毎朝、下田港で水揚げされる旬の魚介を仕入れている。この店は一度、目の前を通っている。2016年11月5日。川端康成伊豆の踊り子天城越えをしたときに泊まった『甲州屋』が向かいにあり、歩いて天城越えをしたときの執着場所にしたからだ。そのときは入らなかったが、不思議な縁で8年の時を経て食べることになった。

旬の味ごろさや

12時30分。店内は満席でカウンターの2席だけ空いていた。連れてきてもらった文章の先生は「焼き魚定食」を頼もうとしたが、30分くらいかかるとのこと。13時5分発の東海バスで松崎を目指さなくてはいけない。先生は「天ぷら定食」にし、僕は「刺身定食」を頼んだ。1800円。熱々の茶碗蒸しが夏と並走する。

旬の味ごろさや

10種類の刺身。ペリーも食べただろうか。黒船メシ。想像の3倍の量。肉厚で歯応えプリプリ。なぜか店内BGMは『CAN YOU CELEBRATE?』とSMAP『しようよ』。インストゥルメンタルで琴の演奏。この店の雰囲気と料理に合っていた。このあと起きる壮大な旅のプレリュード。刺身にして正解だった。

uto〜森下の真夏の夜の夢

東京都にある「森下」は江東区の深川にある1万人ちょっとの小さな町。特に名所もなく都民でも存在を知らない人が多い。俳優・寺島進の生まれ故郷。ジャージ姿でタバコを吸っているところを見かけ、前を通ると丁寧にお辞儀してくれた。めちゃくちゃカッコよく惚れ惚れした。森下は隠れ家的な飲食店が多く、あまり知られていないから、味が良くないとやっていけない。「森下のお店」というだけで、きっと美味いだろうなと期待してしまう。

uto,森下

2024年7月20日(土)、お世話になっている方の誕生日会がuto(うと)で開かれ初訪問。春夏秋冬で夏はいちばん食べ物がおいしくなく、逆に飲食店の実力が試される。おそらくutoは漢字で「烏兎」と書く。フレンチと和食の折衷だがガラスに描かれた龍と漢字から中国文化も合併。閑静な住宅街にあり、黒でシックな外観。初めて来る人は気づかず通り過ぎてしまう。

uto,森下

天然木のカウンター、モルタル調の床、壁はグレー。かなりシンプル。

uto,森下

フォークやスプーンも漆黒。食事が終わるまで変えない。一夜のパートナーとなってくれる。

uto,森下

チリワインのコノスルのように店内に自転車がある。コロナ禍で夫婦ふたりでオープン。旦那さんの料理に合わせて奥様がワインを選ぶ。真のマリアージュ。夏仕様で二人とも麦わら帽子をかぶり、店内はジブリの音楽が流れていた。

uto,森下

メニューは全9品。魚が中心で、ほとんど塩に頼らない。家系や二郎系に慣れたコッテリ舌の若者には物足りないかもしれない。濃淡も緩急も高低差も一枚の絵巻物のような構成。カットボールだけで勝負するヤンキースマリアーノ・リベラ。名勝負の予感がする。

【始】茄子、鮑

uto,森下

第一球。前菜の茄子、鮑。ビネガーやナンプラーのソース、上にキャビア、ダークチェリー。ナスの冷涼とキャビアの塩味が程よい涼しさ。スパークリングワインを合わせる。前菜にしては手が込んでいる。外角にはずのではなく、ど真ん中に勝負球を投げてきた。

【冷】鯵、冬瓜

uto,森下

2品目は鯵(あじ)、冬瓜。 旬の鯵を炙り、はちみつやクリームと和え、少しのバジルを添える。ペアリングのワインは南アフリカの白ワイン、シュナンブラン。フルーティーでなめらか。ワインの存在感が強いが主役の料理を讃えている。夫婦バッテリーの息はピッタリだ。帰って白ワインを買った。

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【蜆】甘酒 リ・スフレ

uto,森下

しじみの出汁のスフレ(お米)。甘酒。イカとアンチョビ、カラスミ。大葉などを和える。

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なんとマリアージュは日本酒。三重県の『夏のブーリュ』フルーティーにして清流。甘いものと甘いもの。不適切にも程があると思いきや、見事なマリアージュ。一つ目の山頂。帰って早速、日本酒を注文した。

【温】帆立 玉蜀黍

【温】帆立 玉蜀黍,uto森下

ピークの直後にまた山頂が来た。今回の9品のヘッドライナー。ホタテと焼きもろこしにバターソース、バルサミコ酢などブレンド。甘味の聖域が口いっぱいに広がる。連続で甘いものを出す大胆さ、少しでもバランスを欠けば失敗する繊細さ。冷静と情熱が一体になった料理。

uto,森下

モンラッシェ型のワイングラス。あまり店でも見かけない。よほどワインが好きだとわかる。合わせるのはカリフォルニアのシャルドネ。ワイン名の『スペルバウンド』は「魔法の力で虜にする」の意味。スクリーミン・ジェイ・ホーキンスの『I Put a Spell on You』。お前を魔法にかけてやる。奥様の強気な攻め。どうやってワインを考えるのか訊くと、料理を食べた直感だという。凄い感性。ストレンジャー・ザン・パラダイス。このワインも注文した。

【肴】蛸 蔓茘枝

uto,森下

ここからは駆け足で。あとはウイニング・ラン。どのコースに投げてもストライクが奪える。タコとゴーヤ。豚ひき肉や松の実を和える。ゴーヤの苦味に合わせてオランダのオレンジワイン。一緒に食事したメンバーはこのマリアージュをMVPに挙げていた。

【魚】鱸 鳳梨 果物時計草

uto,森下

スズキにパイナップル(鳳梨)とパッションフルーツ(果物時計草)のソース。合わせるワインはオレゴン州のエボリューション。本来、スパイシーなエスニック料理に合わせるが、スタンド・バイ・ミーのような優しいマリアージュ。このワインも注文した。

【肉】夏鹿 杜松実

uto,森下

メインの肉料理は宮崎の夏鹿に万願寺唐辛子。ソースはバナナ、ジェニファーベリーのソース。赤ワイン初登場。主役は遅れて登場する。ここで分かった。この夫婦は、かつてのヤクルト・スワローズの石井一久古田敦也。夫の料理を讃えつつ、リードするのは奥様。カカア天下。

【〆】鱧 李

uto,森下【〆】鱧 李

〆(しめ)が冷麺。凛として花火。鱧(ハモ)、すもも、ミョウガを和える。アサリと鶏の出汁。黒オリーブを24時間乾燥させたもの。見事すぎてワインを忘れてしまった。

【甘】桃 扁桃

uto,森下,扁桃

デザートは白桃、紅茶のジュレ。アーモンドミルクアイス。24年熟成の貴腐ワイン、紅茶酒、アマレットが並ぶ壮観。一緒に食べた人は「甘いものは究極の麻薬。この味を知れば麻薬中毒者はいなくなる」と絶賛した。特に初めて飲んだ紅茶酒のなめらかさ、貴腐ワインの時を飲む喉越しはたまらない。

前半のワインは南アフリカアメリカ、日本とニューワールドで固め、後半にフランスの旧世界で締める。《鳥獣戯画》のような見事な構成力。次に来るのは12月の年末。夏は真逆の表情で魅せてくれる。どんな冬のマリアージュが待っているか。もう雪が見えている。