札幌ではなく北広島という小さな町に日本一の野球場がある。人口5万6000人。生まれ故郷、奈良県桜井市の田舎より少ない。石狩平野の中央に位置し、明治の開拓で広島からの入植者が集落をつくったことから北広島になった。2024年は野球場と美術館がセットの旅。年末にプレミア12、来年の秋にアートの本を出版する。
羽田空港から新千歳、エアポート快速に乗って北広島駅に着いたのは13時20分。野球のプレイボールは18時。腹が減っては戦はできぬ。
北広島
旅の迎えメシはラーメンと決めている。旅先で最初に口にするのはラーメン。その街の色がスープに映る。しかし、ここは北海道。北広島にも何軒かあるようだが、せっかくなら鮨を食べよう。『将太の寿司』にドハマりしている最中だ。
海転寿司シーランド
北広島駅からボールパーク通りを歩くと『 海転寿司シーランド』が見えてくる。
お客さんは1組だけ。土木工事の作業者で昼休憩のようだ。お客さんが少ないからか寿司は回っておらず、紙に書くか口頭で注文する。
7つのネタを注文した中で三銃士、その中でも最強が生サバ。440円。ぷりっぷりシャキシャキ、甘みがグイグイ切れ込んでくる伊藤大海のスライダー。追いロジンしたかった。
イキの良さとフレッシュ。弾ける食感の活ホタテ440円。万波中正や水谷瞬の躍動。
甘味のオーケストラ、頼れるストッパー田中正義。ジャスティスのイクラで締め。390円。他にも逸品揃い。
完璧なゲームセット。日本ハムの勝利を確信する(実際に勝利)
KUBOTA AGRI FRONT CAFE
エスコンフィールドが開場する16時までカフェへ。球場に隣接する農場見学施設と一体。
日本ハムや対戦チームのファンで集う。店員さんも日本ハムのユニホームで応援。
とうもろこしロールケーキと珈琲セット950円。スープ皿みたいな巨大な珈琲カップ、14年前にニューヨークで見た。とうもろこしロールケーキは淡雪のようなやさしさ。本当のスイーツは甘さを主張しない。そこにSweet Emotionがある。
札幌
駅馬車(新札幌)
野球観戦のあとは新札幌駅の直結アークシティホテルのお世話になった。5時に目を覚ます。ホテルの部屋にいても北海道は寒い。風邪をひきそうになる。布団を深くかぶって二度寝。前日の疲れで8時半まで寝過ごしてしまう。今日は予定と移動がいっぱい。慌てて顔を洗ってモーニングへ。新札幌駅の直結。大きな日本ハムの看板が目印。
駅馬車の彫像が旅人を癒す。元気な女性ふたりがやっている。店内はアメリカのオールディーズ。50年代の歌。チャック・ベリーの『 リトル・クイーニー』が流れていた。
ワンコインのモーニング500円。欲しいのは旨さよりやさしさ。それが美味しさになる。
ピッツェリア ダ マッシモ
一宿の世話になったアークシティホテルをチェックアウトし、11時1分の千歳線で隣駅の平和駅に向かう。歩いて40分なので徒歩圏内だが、気温30度の真夏日。北海道の一駅の距離はバカにならない。東京ならSMAP『ひと駅歩こう』のように気軽だが、北海道のスケール感は外国だ。東京の暑さに比べればマシだが、地元の人にとっては夏バテしているらしい。
ピッツェリア ダ マッシモは2010年12月の創業。日本ハムの加藤豪将が超のつく常連。多いときは毎週のように通うとか。
カウンター席6席と、テーブル席が2つ。話好きのご主人は日高の浦河町の出身。マキバオーの牧場で有名だ。本来はフルコースのイタリアンをやりたかったが、一人では大変なのでピッツァの専門店にした。日本でいちばん有名なピッツェリアである中目黒ダ・イーサの店主の先輩。1カ月半ほど一緒に働いた。
ピッツェリア ダ マッシモの特徴は生地。24時間、低温で寝かせる。昔ながらのナポリのやり方を踏襲。冷蔵庫がない時代、余ったピッツァを新しい生地に練り込んでいた方法。お店をオープンしたてのときは他の店と同じように鮮度のある生地だったが、全然お客さんが来ないので余ったピッツァを翌日、賄いで食べる。そのとき長期で保存が効く生地を思いつき、実際10日経って食べたほうが美味しかった。他店のピザ生地はじっくり窯で焼くが、ピッツェリア ダ マッシモは焼く時間が短い。
注文したのはマリナーラ1100円と三ツ矢サイダー300円。マリナーラはマルゲリータより古い。魚介ものせない。チーズがないから人気がない。ただし、チーズを焼かないので腐りにくい。マリナーラはパスタでよく作る。イタリアの漁師を支えた文化なので、ぜひ家で作って欲しい。
生地はパリパリ派だが真髄を味わうならモチモチ。マリナーラは先にソースの旨味を提供し、そのあと生地の弾力とお友達になれる。噛めば噛むほど旨味が溢れる。美味しい白米に似ている。ソースより生地。一緒に食の旅をしてくれる。そんな生地。
らーめん信玄
北海道グルメの締め。美術展でヘトヘトになったあと歩いて30分。炎天下を征く先に『らーめん信玄』がある。もう10年くらい前にGReeeeNのHIDEがブログで紹介していた。憧れのお店。
16時22分。店員さんは4人。全員20代。すでに1人並んでいた。店内はガンガンに冷房がきいて涼しい。生き返る。
L字のカウンターのみ。次々にお客さんが入店。すごい人気だ。松任谷由実の『守ってあげたい』が流れていた。
6種類の中から最もスタンダードな信州をチョイス。950円。餃子、ライスとのセットメニューは土佐(あっさり塩)のみ。 最初の一口目は辛味噌の越後にすればと後悔。物足りない。しかし、箸を進めるごとにうまさが増す。甘い信州味噌がまろやかで上品なスープ。疲れを包み込んでくれる。まさに守ってあげたい。どこかで食べた味。そうだ。かつて信州の雪山、たぶん八ヶ岳を登ったあとに食べた味。懐かしさと未来への前進。これで札幌に悔いはない。
新千歳空港
雪印パーラー
新宿へ発つ前の最後のスイーツ。らーめんのデザートは。搭乗ゲート前の雪印パーラー。
惜別ソフトクリーム。空港限定の「空港ソフト」と子どもの頃に飲んだ雪印コーヒーのミックス。甘さ抑えめ、ミルキーなバニラ。ちょうど良い塩梅。少し苦味を感じる雪印コーヒーとの相性や良し。翼を広げられるソフトクリーム。